鈴木代表理事
ここ2週間ほどアメリカの大統領選挙が気になってしまって、ずっと趨勢を追っかけていました。今から35年以上前になりますが、10年ほどアメリカで仕事をし、暮らしていた者としては、今のアメリカは悲しく寂しく映ります。若い日にあこがれていた自由と機会の国、アメリカはこのような国だったのかと。人種構成が大きく変わったことの影響もあるのでしょう。分断と憎悪はいつも世にもどの国でもあり得ることです完全に無くすことはできないでしょうが、アメリカはこれからいかにこれらを和らげていけるのでしょうか。我が国にも、そして世界にも大きな影響があります。SNSの影響も大きいと思いますが、自分の考え(のみ)が正しく、正しいからそれを自由に発信することが正義だと単純に思い込んでいる人が多いということでしょう。結果として分断を煽るばかりなのに。意見の相違を超えて折り合いをつけながら、皆を巻き込んでいかなくては本当に正しいことにはならないのに。 さて、私の地元からの報告です。去る10月27日、「小田原・箱根気候変動ワンチーム宣言」https://www.odawara-cci.or.jp/information/20201027OneTeamRelease.htmlを発出しました。地元の商工会議所の会頭として、小田原市と箱根町の両首長、両議会、両自治会に声をかけたところ、皆さんの賛同をいただき実現することができました。(宣言文添付) 長文で恐縮ですが、宣言イベントの際に、その趣旨と経緯を披露した私のスピーチの原稿を以下掲載します。 ======================================== ここ数年来の夏の暑さ、豪雨、台風などの異常気象。異常気象というのは気象庁の定義によると30年に一度の現象を言うのだそうです。これだけ毎年のように頻繁に起これば、もう既に異常ではなく、通常と言うべきかも知れません。その他にも海のマイクロプラスチックの汚染や大規模な山火事や多くの生物種が絶滅していくことなど地球規模で、環境変化が、そして、それを原因とする気候変動が起こっています。ただ、気候変動というとどうしても手が届かないと感じたり、地球の裏側の話だと思いたがったり、あるいは、世界的に活動している大きなグローバル企業が心配すべきことだと思ったり、特に私たち地域の中小企業の経営者はそう思いがちです。果たしてそれでいいのだろうか? もし気候変動がこれ以上進んでしまったら、私たちの商売の舞台もなくなってしまうのではないか? そして、そんな世の中を次の世代に残していいのか?と真剣に考え始めました。 その頃、わが国はラグビーワールドカップ。これまた台風で開催が危ぶまれることもありましたが、日本代表の快進撃もあり日本中が大いに盛り上がっていました。そこには、綿密な役割分担と準備、フォーメーションを組み、力を合わせること、倒されても起き上がり最後まであきらめないこと、まさにワンチームとして課題に果敢に挑戦するラガーマンの姿がありました。(注:小田原はオーストラリア代表のキャンプ地) 少しでもましな世の中を残すために何か動かねばと思い、今日一緒に宣言に加わっていただく、この地域の暮らしと経済に大きな役割のあるTOPの方々に相談をさせていただいたところ、皆さんから賛同をいただくことができました。それぞれの団体の中でご議論をいただき、宣言文の取りまとめをし、去る5月に発出を目指して具体的に動いておりました。 そんな中の昨年10月の台風19号。箱根を襲った大雨で、箱根と、それと一体をなす 小田原の観光と経済は大打撃を受けました。気候変動は決して他人事ではなく、私たちの日々の暮らしや商いに直接的な影響のある自分事だと感じた方も多かったはずです。 そして、さらにこのコロナ禍であります。結果としてこの宣言は半年遅れとなったわけですが、いまだ現在進行形とはいえ、コロナを経験して、よりいっそうこの宣言の意味と重要性は深まったと感じています。 このコロナの大変な時に気候変動ですか?という声もあろうかと思います。 しかし、コロナの真っ只中で思っています。コロナで私たちが体験していること、例えば、新幹線も道路も空いていたり、老舗の会社が経営に行き詰まったり、テレワークのような場所を問わない働き方が始まったり、東京集中から地方分散へと動き出したりと、最近の世の中の動きは、コロナがなくとも起こり得た、いわば「来るべき未来」の姿なのではないか?と。コロナが未来を一足先に運んできたのかもしれません。とすれば、もう戻ることはできないし、戻ろうともがくより、来るべき未来の中で自分はどうイキイキワクワク暮らしていけるのか? 地域はどうあるべきか? 会社はどうお客様の役に立てるのか?を考え、できることから始めるほうが前向きになれそうです。 では、来るべき未来とはどんな世の中なのでしょうか? 時あたかも 昨日(注:2020年10月26日)菅総理大臣がようやく2050年の温暖化ガスゼロ宣言を声高らかにされました。2050年まではあと30年です。 菅総理の所信表明演説の一節を引用させていただきます。 「成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大注力してまいります」 「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革につながるという発想の転換が必要です」 さて、気候変動の原因である温暖化は、いつ始まったのか歴史を振り返ってみます。 今から200年ほど前、18世紀から19世紀に掛けて、人々はより便利で豊かな暮らしを求め、近代化のかけ声とともに、地下からは化石燃料や様々な資源を掘り起こし、燃やし放題、使い放題して、海からはたくさんの恵みをいただき、余りものは捨て放題、ゴミもそのままにしてきました。いわゆる「産業革命」です。そのおかげで私たちは便利で豊かな生活を手に入れました。そして、それを支えるために様々なビジネスが起こり、経済を拡大させてきました。ですから、そのことを非難したり、批判することはできないと思います。が、しかし、そのことから学ぶことはできると思いますし、学ぶべきだと思います。 コロナで傷んだ暮らしと経済をどう回復していくのか?コロナからの回復は気候変動を無視してはできません。まさに気候変動に果敢に挑戦することが、コロナで傷んだ社会や経済再生のキーだと思うべきではないでしょうか? こんな話を聴きました。ある日本の大企業、いわゆるグローバル企業の役員の方から聴いた話です。その会社は事務機器を大量にヨーロッパに売っています。毎年入札制度、つまり、価格と仕様書を提出して審査され、条件が合えば落札。以前は落札をするとその後に御社は地球温暖化にそういう対応をしていますか? ESGにどういう取り組みをしていますか?と訊かれたそうです。が、ここ近年は入札の時に価格と仕様と一緒に環境やESGへの取組の計画書を提出することを求められるのだそうです。めでたく落札をすると、今度はその四半期ごとに進捗のレポートも提出しなくてはならないのだそうです。それは先進的なヨーロッパの大企業のことでしょ?とおもいがちですが、もしその日本企業が入札に負け、注文がなくなるとその会社の仕事を受注している国内の協力工場が一連托生、商売がなくなります。その協力工場は地域の中小企業かも知れません。気候変動は、決してグローバル企業だけが心配すればいい問題などではなく、私たちにとって自分事だと思いました。商売も暮らしも全て「つながり」の中にあるのです。 私たち地域の中小企業は、地域の暮らしのベースである地域の経済の下支えをしています。私たちが元気でないと地域も元気を失う。逆に地域が健全でないと私たちも活躍できない。まさにワンチームです。 もしかしたら、今まで環境と経済は相反するもの、矛盾するものだと思ってきたかもしれません。そうではなく、これからは環境にしっかり取り組まないと経済も成り立たない。 環境がビジネスチャンスになる。つまり。環境と経済が一体化する時代の到来です。 来るべき未来のキーワードは、まさに、・脱炭素・循環型経済・集中から分散でありましょう。 産業革命から200年。2050年まであと30年。ここまでの200年を考えれば、私たちに残された時間はあまり長くありません。ラグビーでいえば、私たちは前後半40分の計80分の試合の残り時間10分くらいのところにいるのかも知れません。最後まであきらめるわけにはいきません。ラグビーにはリターンマッチ、次の試合があるかも知れません。が、私たちの、そして私たちの子供たち、孫たちにとって、このふるさとである地球はたった一つです。 小田原箱根ワンチーム宣言は、今日ここで発出することがゴールではありません。 この先の、ゴールの見えにくい、しかし、時間の限られたマッチのキックオフであること、
WITH・POSTコロナの時代では、1.気候変動の対策として、2.地域循環型の経済を再構築し地域を元気にしていく経済施策として、「省エネ」と「再生可能エネルギーの地産地消」というエネ経会議がずっと標榜している旗印が、より(注目を浴びるべき)いっそう重要になってきていると思うのです。
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