耕作放棄地を活用し、自然生態系への配慮、地域課題の解決、農業の最大限の支援、事業の持続可能性という4つの基本方針のもと、地域経済に貢献する仕組みを構築。細型パネルの採用による農業への影響低減、有機農業と不耕起栽培の実践、6次産業化による付加価値創造、災害時の電力供給など、多岐にわたる取り組みを紹介。さらに、水田でのソーラーシェアリングの可能性やペロブスカイト太陽電池の活用、そしてアフリカの砂漠緑化という壮大な将来構想まで語られた。
匝瑳市は、千葉県の北東部に位置する市。人口32,650人、14,933世帯(令和8年1月)。東京都心から70km、千葉市から40km、成田空港から20kmの距離にある。東京駅からだと特急で1時間14分。八日市場駅に着く。植木・苗木の産地として知られる。農業が基幹産業で、市域の半分以上が農地。水稲、野菜、畜産など幅広い農業が営まれているところ。しかし全国的な傾向と同じく、人口減、高齢化などが進行し、農家も減少。耕作放棄地も増えていた。ちなみに農業経営者数は2005年2、326戸から2020年1、090戸となっている(関東農政局)。
匝瑳市の田園風景とソーラーシェアリング
そんななか、2014年7月より、地元農業者・千葉県内の環境や自然エネルギーにかかわる団体、市民活動家が連携し市民発電所設立に向けた法人を創る。2011年福島原発の事故を契機に遊休地を有効活用し、農業も再生する取り組みが始まる。この取り組みが成果を生み匝瑳市では2050年の脱炭素社会実現に向けた「匝瑳市ゼロカーボンシティ宣言」を表明。市民・事業者・市が協働した省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用などの取り組みを推進。環境省事業の「脱炭素先行地域」に匝瑳市の計画提案が県内2例目として選定された。
●脱炭素先行地域 - 脱炭素地域づくり支援サイト (環境省)
●脱炭素先行地域 - 脱炭素地域づくり支援サイト (環境省)
ソーラーシェアリングの下にある「むらづくり基金」の案内
宮下朝光さんから、これまでの経緯と成果、そして次の展望が語られた。
1・事業展開の背景と現状(千葉県匝瑳市飯塚地区)
約50年前、国の農地増反政策により山の上が削られ、栄養のない粘土質の痩せた土地が生まれた。当初はタバコ栽培が行われたが、契約打ち切りと共に耕作放棄地が拡大。11年前の時点で、80ヘクタールのうち4分の1以上が耕作放棄地となっていた。
現在、市民エネルギーちば株式会社および関連会社、趣旨に賛同する他社を合わせて、大中小44設備、合計7.2メガワットのパネル容量を持つ設備が設置されている。
地域への還元システム
・売電料収入の一部を、地域が設立した協議会へ「地域協賛金」として寄付する。この資金の使途について事業者は口を出さない。
・現地の2つの農業法人に対し、ソーラーシェアリング設備下での農作業を委託し、「耕作協賛金」を支払う。
・設備設置により発生する固定資産税は、地域の自治体の税収となる。
・借地している農地の地権者には賃料を支払う。
・これらの仕組みにより、売電収入の約11%が地域に還流している(FIT価格36円~18円の案件の場合)。
農業の実践
2つの農業法人が、有機(オーガニック)で農業を実践。現在23ヘクタールで有機農業、うち3.6ヘクタールで不耕起栽培を行っている。
土地の特性から、主に大豆と大麦を栽培している。
水はけ、収穫時期の問題から、輪作に工夫が必要。大麦→大豆の順は可能だが、大豆を先に作ると大麦の播種に間に合わないため、緑肥を挟むなどの対応をしている。
収穫された有機大豆・大麦は、味噌、大豆コーヒー、大豆オイル、大豆ミート、ソイスクリーム(アイスクリーム用)、地ビール(ソーラーエール)などに6次産業化され、付加価値をつけて販売されている。
1・事業展開の背景と現状(千葉県匝瑳市飯塚地区)
約50年前、国の農地増反政策により山の上が削られ、栄養のない粘土質の痩せた土地が生まれた。当初はタバコ栽培が行われたが、契約打ち切りと共に耕作放棄地が拡大。11年前の時点で、80ヘクタールのうち4分の1以上が耕作放棄地となっていた。
現在、市民エネルギーちば株式会社および関連会社、趣旨に賛同する他社を合わせて、大中小44設備、合計7.2メガワットのパネル容量を持つ設備が設置されている。
地域への還元システム
・売電料収入の一部を、地域が設立した協議会へ「地域協賛金」として寄付する。この資金の使途について事業者は口を出さない。
・現地の2つの農業法人に対し、ソーラーシェアリング設備下での農作業を委託し、「耕作協賛金」を支払う。
・設備設置により発生する固定資産税は、地域の自治体の税収となる。
・借地している農地の地権者には賃料を支払う。
・これらの仕組みにより、売電収入の約11%が地域に還流している(FIT価格36円~18円の案件の場合)。
農業の実践
2つの農業法人が、有機(オーガニック)で農業を実践。現在23ヘクタールで有機農業、うち3.6ヘクタールで不耕起栽培を行っている。
土地の特性から、主に大豆と大麦を栽培している。
水はけ、収穫時期の問題から、輪作に工夫が必要。大麦→大豆の順は可能だが、大豆を先に作ると大麦の播種に間に合わないため、緑肥を挟むなどの対応をしている。
収穫された有機大豆・大麦は、味噌、大豆コーヒー、大豆オイル、大豆ミート、ソイスクリーム(アイスクリーム用)、地ビール(ソーラーエール)などに6次産業化され、付加価値をつけて販売されている。
ちなみに日本の食料自給率は38%。そのなかで大豆の自給率は7%。大麦の自給率は12%。ミカモゴールデンは、主にビール醸造に使われる二条大麦の品種。国の政策では有機農業を推進しているが、取り組み面積は0.8%。これを国では2050年までに25%にするとしている。つまり市民エネルギーちば株式会社の農業の取り組みは、国内でも先駆的なものといえる。
●世界の食料自給率(農林水産省)
●有機農業をめぐる事情について(農林水産省)
災害時の電力供給
低圧設備には、パワコンに自立運転機能が搭載されている。
広域停電時にはモードを切り替えることで100Vコンセントが使用可能となり、家電製品に電力を供給できる。
停電時は電気を無料で開放する。現在、少なくとも23設備が電力供給可能。
運用は寄付金を受け取る地域の任意団体に委ねられており、パワコンの鍵も預けてあるため、緊急時には地域住民が主体的に対応できる。
●世界の食料自給率(農林水産省)
●有機農業をめぐる事情について(農林水産省)
災害時の電力供給
低圧設備には、パワコンに自立運転機能が搭載されている。
広域停電時にはモードを切り替えることで100Vコンセントが使用可能となり、家電製品に電力を供給できる。
停電時は電気を無料で開放する。現在、少なくとも23設備が電力供給可能。
運用は寄付金を受け取る地域の任意団体に委ねられており、パワコンの鍵も預けてあるため、緊急時には地域住民が主体的に対応できる。
無料ソーラー供給所を紹介する宮下朝光さん
2. ソーラーシェアリングの技術とポテンシャル
細型パネルの採用と利点
・長島彬氏が2004年に取得した特許を遵守し、「細型パネル」と「遮光率3分の1」を基本としている。
・農業への利点: 影が細く、常に移動するため、作物に光が当たり成長を阻害しない。短いサイクルで光と影が繰り返されることは光合成に理想的とされ、50種類以上の野菜で問題ないことが確認されている。
土壌への利点: パネル幅が狭いため、雨水が集中して落下し土壌を削る影響が少ない。
耐風性: パネルが細いため風圧荷重が小さく、風に強い。2019年の台風15号(推定最大瞬間風速50m/s超)の際も、単管パイプの設備を含め被害はゼロだった。
設備構造と農作業
設備の高さは約3m30cm~3m40cm超、支柱間隔は約4m50cmで、60馬力までのコンバインやトラクターが進入可能。
設備設置時に重機(ユンボ)を使い、暗渠や明渠を整備して水はけを改善。暗渠には籾殻燻炭を入れ、微生物の定着と水の流れの改善を図る。
細型パネルの採用と利点
・長島彬氏が2004年に取得した特許を遵守し、「細型パネル」と「遮光率3分の1」を基本としている。
・農業への利点: 影が細く、常に移動するため、作物に光が当たり成長を阻害しない。短いサイクルで光と影が繰り返されることは光合成に理想的とされ、50種類以上の野菜で問題ないことが確認されている。
土壌への利点: パネル幅が狭いため、雨水が集中して落下し土壌を削る影響が少ない。
耐風性: パネルが細いため風圧荷重が小さく、風に強い。2019年の台風15号(推定最大瞬間風速50m/s超)の際も、単管パイプの設備を含め被害はゼロだった。
設備構造と農作業
設備の高さは約3m30cm~3m40cm超、支柱間隔は約4m50cmで、60馬力までのコンバインやトラクターが進入可能。
設備設置時に重機(ユンボ)を使い、暗渠や明渠を整備して水はけを改善。暗渠には籾殻燻炭を入れ、微生物の定着と水の流れの改善を図る。
ソーラーシェアリングのポテンシャル
様々な再エネ電源の中で、農地のポテンシャルが圧倒的に大きい。
試算上、日本の農地の17%にソーラーシェアリングを導入すれば、日本の電力会社が販売する電力量(約9000億kWh以上)を賄うことが可能。
現在約10%あると言われる耕作放棄地を活用するだけでも、非常に大きなインパクトが期待できる。
水田でのソーラーシェアリング
農業分野からのGHG排出(温室効果ガス)のうち、27%が水田からのメタンガスであるため、水田での展開が本命。
福島大学での模擬実験では、収量と1等米比率が向上し、メタン発生を30~50%削減するという良好な結果が出ている。
今後、北海道大学、千葉大学、龍谷大学などと連携し、同様の実験を進めていく計画。
様々な再エネ電源の中で、農地のポテンシャルが圧倒的に大きい。
試算上、日本の農地の17%にソーラーシェアリングを導入すれば、日本の電力会社が販売する電力量(約9000億kWh以上)を賄うことが可能。
現在約10%あると言われる耕作放棄地を活用するだけでも、非常に大きなインパクトが期待できる。
水田でのソーラーシェアリング
農業分野からのGHG排出(温室効果ガス)のうち、27%が水田からのメタンガスであるため、水田での展開が本命。
福島大学での模擬実験では、収量と1等米比率が向上し、メタン発生を30~50%削減するという良好な結果が出ている。
今後、北海道大学、千葉大学、龍谷大学などと連携し、同様の実験を進めていく計画。
3. 将来展望と連携
不耕起栽培と炭素貯留
2021年からパタゴニアや茨城大学と連携し、不耕起栽培を開始。
不耕起栽培は土壌中に有機物の形で炭素を貯留し、年間0.4%ずつ土中炭素量を増やすという論文(4パーミルイニシアチブの根拠)があり、GHG削減効果が高い。
新しい農業の定義「農村経営業」
これまでの農業を「農産物製造業」と捉えるのに対し、ソーラーシェアリングは売電収入、企業連携による関係人口増加、環境価値のクレジット化など、地域の資源を多角的に活用する。
このような活動を「農村を経営する業」すなわち「農村経営業」と呼ぶことを提唱している。
ペロブスカイト太陽電池の活用
グループ会社の株式会社TERRAが、薄くて軽いペロブスカイト太陽電池を仕入れ、飛行機の翼のような断面のパネルを開発・販売する計画。
材料のヨウ素は世界の埋蔵量の70%が千葉県の地下に存在するため、国産でパネル製造が可能という強みがある。
グループの野望:アフリカの砂漠緑化
ソーラーシェアリングで発電し、その電力で大気中から水を作り出す。
日本企業が開発した生分解性の吸水ポリマーに水を蓄え、種を植えて緑化を進める。
将来的には、豊富な電気と水で水素を製造し、アフリカを水素輸出国として豊かにすることを目指している。
既にエチオピアとUAEで実証プラントの建設が決定している。
不耕起栽培と炭素貯留
2021年からパタゴニアや茨城大学と連携し、不耕起栽培を開始。
不耕起栽培は土壌中に有機物の形で炭素を貯留し、年間0.4%ずつ土中炭素量を増やすという論文(4パーミルイニシアチブの根拠)があり、GHG削減効果が高い。
新しい農業の定義「農村経営業」
これまでの農業を「農産物製造業」と捉えるのに対し、ソーラーシェアリングは売電収入、企業連携による関係人口増加、環境価値のクレジット化など、地域の資源を多角的に活用する。
このような活動を「農村を経営する業」すなわち「農村経営業」と呼ぶことを提唱している。
ペロブスカイト太陽電池の活用
グループ会社の株式会社TERRAが、薄くて軽いペロブスカイト太陽電池を仕入れ、飛行機の翼のような断面のパネルを開発・販売する計画。
材料のヨウ素は世界の埋蔵量の70%が千葉県の地下に存在するため、国産でパネル製造が可能という強みがある。
グループの野望:アフリカの砂漠緑化
ソーラーシェアリングで発電し、その電力で大気中から水を作り出す。
日本企業が開発した生分解性の吸水ポリマーに水を蓄え、種を植えて緑化を進める。
将来的には、豊富な電気と水で水素を製造し、アフリカを水素輸出国として豊かにすることを目指している。
既にエチオピアとUAEで実証プラントの建設が決定している。
地域活動から始まり国内から海外まで広がる活動紹介に惹かれ現地に伺い実際の現場で取り組みをお聞きすることとなった。
事業参画の経緯と創業メンバーとの関わり
宮下朝光さんのキャリアは、(一社)共同通信社の技術部門でサーバーシステムを監視する業務だった。現在のソーラーシェアリング事業との関わりは、自宅の新築時に、妻の希望でOMソーラー(太陽熱利用システム)を導入したことがきっかけ。その際、施工業者から国の補助金制度を背景に太陽光発電設備の設置も提案され、約200万円の追加投資を決断。今から28年前の1998年3月、まだ全国で導入者が1万5000人程度、価格も1kWあたり117万円と高価な時代に、自宅の屋根にパネルを設置した。
事業参画の経緯と創業メンバーとの関わり
宮下朝光さんのキャリアは、(一社)共同通信社の技術部門でサーバーシステムを監視する業務だった。現在のソーラーシェアリング事業との関わりは、自宅の新築時に、妻の希望でOMソーラー(太陽熱利用システム)を導入したことがきっかけ。その際、施工業者から国の補助金制度を背景に太陽光発電設備の設置も提案され、約200万円の追加投資を決断。今から28年前の1998年3月、まだ全国で導入者が1万5000人程度、価格も1kWあたり117万円と高価な時代に、自宅の屋根にパネルを設置した。
現在の会社と地域、企業、民間団体との関連を解説する宮下さん
当初は専門知識がなく、1年という短い保証期間に不安を感じていたところ、東京電力からの案内で個人の太陽光発電オーナーが集う市民活動団体設立の動きがあることを知り事務局へ連絡。後に「太陽光発電所ネットワーク」が発足、活動に参加する中で多くの専門家と出会い、気づけば千葉地域交流会の代表に就任。セミナー開催やイベント出展を通じて住宅用太陽光の普及に努めるようになった。
●「太陽光発電所ネットワーク」
この活動が、後の事業の核となる人物との出会いをもたらす。宮下さんが司会を務める会議に、後の代表となる東光弘氏と、会長となる椿茂雄氏がオブザーバーとして同時に参加。当時、東氏は地球温暖化への強い危機感から、私財を投じてでもCO2削減に貢献したいと土地を探していた。一方、兼業農家である椿茂雄氏は、地元で山を切り拓いて造成された80ヘクタールの農地が耕作放棄地化していく惨状を憂い、太陽光発電と農業を結びつけて農地を再生できないかと模索していた。この二人の問題意識が、スピーカーが主催する活動の場で交差したことが、事業構想の原点となった。東氏とは、彼が個人で参加したフォーラム後の名刺交換を機に、氏が立ち上げた「リネットちば」にも参加し、交流を深めていった。東光弘氏は、現在、市民エネルギーちば株式会社の代表取締役。それまでは有機農産物・エコ雑貨の流通の仕事を手掛けていて環境問題に関心をもっていた。椿茂雄氏は、匝瑳市の兼業農家で、遊休地の活用を模索していた。現在は、市民エネルギーちば株式会社の取締役会長だ。
●「リネットちば」
●「太陽光発電所ネットワーク」
この活動が、後の事業の核となる人物との出会いをもたらす。宮下さんが司会を務める会議に、後の代表となる東光弘氏と、会長となる椿茂雄氏がオブザーバーとして同時に参加。当時、東氏は地球温暖化への強い危機感から、私財を投じてでもCO2削減に貢献したいと土地を探していた。一方、兼業農家である椿茂雄氏は、地元で山を切り拓いて造成された80ヘクタールの農地が耕作放棄地化していく惨状を憂い、太陽光発電と農業を結びつけて農地を再生できないかと模索していた。この二人の問題意識が、スピーカーが主催する活動の場で交差したことが、事業構想の原点となった。東氏とは、彼が個人で参加したフォーラム後の名刺交換を機に、氏が立ち上げた「リネットちば」にも参加し、交流を深めていった。東光弘氏は、現在、市民エネルギーちば株式会社の代表取締役。それまでは有機農産物・エコ雑貨の流通の仕事を手掛けていて環境問題に関心をもっていた。椿茂雄氏は、匝瑳市の兼業農家で、遊休地の活用を模索していた。現在は、市民エネルギーちば株式会社の取締役会長だ。
●「リネットちば」
宮下さん(左)と市民エネルギーちば株式会社・代表取締役の東光弘さん(右)
会社設立とソーラーシェアリング事業の黎明期
東氏と椿氏の出会いは、事業化への大きな一歩となった。土地を探す東氏に対し、椿氏が「そんな土地ならいくらでもある」と応じたことで、耕作放棄地を活用したソーラーシェアリングの構想が具体化する。理論的支柱となったのは、農業機械の設計技師であった長島彬氏(CHO技術研究所代表、ソーラーシェアリング推進連盟最高顧問)が、2003年に考案し、2005年に無償公開した「細長いパネルを使い、遮光率を3分の1に抑える(隙間を3分の2空ける)」という営農継続を最優先する特許技術であった。東氏は2012年から長島氏の実験農場で50種類以上の作物が育つことを実証し、その有効性を確信していた。
●ソーラーシェアリング推進連盟
こうして、同じ志を持つ環境活動家ら9人が集結。1人10万円ずつを出し合い、資本金90万円の合同会社として事業をスタートさせた。創業メンバーの多くはNPO法人の代表や理事クラスであり、利益配当を求めず、得られた利益は次の発電所建設に再投資するという理念を定款に明記した。
東氏と椿氏の出会いは、事業化への大きな一歩となった。土地を探す東氏に対し、椿氏が「そんな土地ならいくらでもある」と応じたことで、耕作放棄地を活用したソーラーシェアリングの構想が具体化する。理論的支柱となったのは、農業機械の設計技師であった長島彬氏(CHO技術研究所代表、ソーラーシェアリング推進連盟最高顧問)が、2003年に考案し、2005年に無償公開した「細長いパネルを使い、遮光率を3分の1に抑える(隙間を3分の2空ける)」という営農継続を最優先する特許技術であった。東氏は2012年から長島氏の実験農場で50種類以上の作物が育つことを実証し、その有効性を確信していた。
●ソーラーシェアリング推進連盟
こうして、同じ志を持つ環境活動家ら9人が集結。1人10万円ずつを出し合い、資本金90万円の合同会社として事業をスタートさせた。創業メンバーの多くはNPO法人の代表や理事クラスであり、利益配当を求めず、得られた利益は次の発電所建設に再投資するという理念を定款に明記した。
しかし、資本金90万円では金融機関からの融資は得られず、最初の1号機建設資金(約800万円)は、椿氏個人からの短期借入金で賄われた。さらに、建設コストを抑えるため、労力はすべて自分たちで提供。数人のメンバーが毎週末に集まり、穴掘りから単管パイプでの架台設営まで、実に95%の工程を自らの手で行った。資金回収のために考案されたのが、独自の「パネルオーナー制度」である。これは、一般市民にパネルを1枚2万5000円で販売し、会社がそれを借り上げて年間2,000円のリース料を支払う仕組み。10年後には会社が1万円でパネルを買い取る契約で、オーナーは10年間で5,000円がお得になる。この制度は、自宅にパネルを置けない集合住宅の住民などから予想以上の需要があり、1号機は即完売。続く増設分も完売し、事業の初期基盤を築くことに成功した。
事業の原点と地域貢献モデルの構築
第1号機は週末に有志が手弁当で穴掘りから始め、95%を手作りで建設された。パネルは技術的制約から完全な直線設置ができず、高さも地域では最も低い2.5メートルとなっている。手作りゆえの不揃いも含めて「会社の原点」として強い愛着が語られている。
この原点から発展した社会的責任の中核は「売電収入からの地域還元」である。すべての発電所から必ず出費(寄付)を拠出し、低圧設備では年6万円~4万円、メガソーラーでは年間200万円を地域へ提供する事例が明示された。併せて災害対応の電力供給拠点としての機能を備え、停電時にはパワコンの自立運転モードへ切替えることで1500Wまで無償で住民が電力を使用可能とした。自立運転用コンセントはパワコン1台につき1個用意されている。1500W制限はJIS規格の延長コードの耐性(1500W超は火災リスク)に基づく。系統連系モードでは電力は全量系統へ送電されるが、停電時は系統連系ゼロでパワコン出力も自動で停止する。操作講習を実施し、誰でもモード切替できる体制を整えており、実際に6年前の台風時に運用実績がある。
第1号機は週末に有志が手弁当で穴掘りから始め、95%を手作りで建設された。パネルは技術的制約から完全な直線設置ができず、高さも地域では最も低い2.5メートルとなっている。手作りゆえの不揃いも含めて「会社の原点」として強い愛着が語られている。
この原点から発展した社会的責任の中核は「売電収入からの地域還元」である。すべての発電所から必ず出費(寄付)を拠出し、低圧設備では年6万円~4万円、メガソーラーでは年間200万円を地域へ提供する事例が明示された。併せて災害対応の電力供給拠点としての機能を備え、停電時にはパワコンの自立運転モードへ切替えることで1500Wまで無償で住民が電力を使用可能とした。自立運転用コンセントはパワコン1台につき1個用意されている。1500W制限はJIS規格の延長コードの耐性(1500W超は火災リスク)に基づく。系統連系モードでは電力は全量系統へ送電されるが、停電時は系統連系ゼロでパワコン出力も自動で停止する。操作講習を実施し、誰でもモード切替できる体制を整えており、実際に6年前の台風時に運用実績がある。
農地については、耕作放棄地の再生に注力。現在は23ヘクタールで有機農業を行い、有機JAS認証を取得。農地の60%以上を農家から借り、40%近くを農業法人で購入して耕作する。生産はビール用の大麦と大豆を中心に、年2回の輪作で土壌改良を進める。現在の農地は50年前まで山で、国の補助金で山の上半分を造成した場所であり、造成直後は水はけが悪く栄養分・生物の乏しい痩せた土壌だったため、初期はタバコ・大豆・麦類を導入した。元々の地域はタバコ契約打ち切りにより耕作放棄が進行した背景があり、その再生は地域課題の解決として位置づけられている。
事業拡大とソーラーシェアリング技術の進化
第1号機後、パネルオーナー方式(市民にパネルを販売、裏面にオーナー名札を貼付)で資金を調達し隣接地へ増設、さらに2号機、19号機と同手法で拡張した。2019年までは架台の強度計算書提出が不要で単管パイプ方式が活用できたが(農地ではコンクリート基礎は設けられない)、2020年以降は強度計算書の提出が必須となり、スクリュー杭、アルミ架台方式に変わり、経済産業省配下の保安監督部の承認が接続の前提となった。
第1号機後、パネルオーナー方式(市民にパネルを販売、裏面にオーナー名札を貼付)で資金を調達し隣接地へ増設、さらに2号機、19号機と同手法で拡張した。2019年までは架台の強度計算書提出が不要で単管パイプ方式が活用できたが(農地ではコンクリート基礎は設けられない)、2020年以降は強度計算書の提出が必須となり、スクリュー杭、アルミ架台方式に変わり、経済産業省配下の保安監督部の承認が接続の前提となった。
パネルの裏に出資者の名札がつけてある
資金面では、城南信用金庫が「会社は小さいが志は大きい」と評価し、総事業費3億円・農地3.2ヘクタール・出力1.2MWの「単管パイプ」メガソーラーシェアリング(2017年3月竣工)に対して2億円の融資を実施。これを契機に、低圧設備への融資と広がり、3号機~6号機の建設へと連鎖。その後、千葉銀行や銚子信金など地方金融機関も安全性を認識し積極姿勢へ転じた。
設計面では、強風対策として筋交いの改良を重ねた。メガ1号機は下部から長い筋交いを出し架台を強化。トラクターやコンバインの通行性も担保しつつ、最大瞬間風速50メートルの台風でも被害ゼロを記録。細長パネル採用により、風圧荷重の低減、雨垂れによる土壌侵食抑制、パネル1に対して空間2の比率で、影が細く移動して作物への影響を低減する3つの利点が確認された。後継の27号機・28号機では営農者の要望に応じて高い位置から短い筋交いへ改良し、通行性と見栄えを向上。将来は、さらに直線の筋交いから曲線(R)への移行でデザイン性と機械作業性の両立を目指す。
売電面では、FIT32円により、年間約5000万円の売電収入が得られる。その収入から年間200万円を村づくり協議会に寄付。耕作は農業法人に委託し、委託料は年間300万円(2026年からは増額)。収穫物は農業法人の収入となり、大豆・大麦をkgあたり500~600円で買い取り、地ビール・味噌へ6次化している。
設計面では、強風対策として筋交いの改良を重ねた。メガ1号機は下部から長い筋交いを出し架台を強化。トラクターやコンバインの通行性も担保しつつ、最大瞬間風速50メートルの台風でも被害ゼロを記録。細長パネル採用により、風圧荷重の低減、雨垂れによる土壌侵食抑制、パネル1に対して空間2の比率で、影が細く移動して作物への影響を低減する3つの利点が確認された。後継の27号機・28号機では営農者の要望に応じて高い位置から短い筋交いへ改良し、通行性と見栄えを向上。将来は、さらに直線の筋交いから曲線(R)への移行でデザイン性と機械作業性の両立を目指す。
売電面では、FIT32円により、年間約5000万円の売電収入が得られる。その収入から年間200万円を村づくり協議会に寄付。耕作は農業法人に委託し、委託料は年間300万円(2026年からは増額)。収穫物は農業法人の収入となり、大豆・大麦をkgあたり500~600円で買い取り、地ビール・味噌へ6次化している。
企業連携では、パタゴニア(Patagonia=登山やサーフィンなどアウトドア衣料品を手掛ける会社) が良質な再生可能エネルギーを求めて見学・参画し、同社発行の社債を引き受けた。その資金で高圧1機、低圧1機の設備を建設。さらにサザビーリーグ(ロンハーマン、カナダグース)も同様に同社発行の社債を引き受け、低圧6設備の設備を建設した。企業による環境投資への広がりも形成された。またJリーグとも連携が始まり、2025年、ガイナーレ鳥取、水戸ホーリーホックが関わる農地にソーラーシェアリング設備(低圧)がそれぞれ導入された。
メガ1号機の開所式には元総理大臣3名(小泉純一郎氏、細川護熙氏、菅直人氏)が訪れている。
●パタゴニア
●サザビーリーグ
●ロンハーマン
●カナダグース
メガ1号機の開所式には元総理大臣3名(小泉純一郎氏、細川護熙氏、菅直人氏)が訪れている。
●パタゴニア
●サザビーリーグ
●ロンハーマン
●カナダグース
次世代技術ペロブスカイト太陽電池と未来展望
ペロブスカイト太陽電池は、フィルム状で軽量・柔軟という特性を持ち、農業親和性に優れる。黒く光る太陽電池の総厚さは1ミリメートルで、ペロブスカイト層は0.001ミリメートル(1ミクロン)。空気と水に弱いため真空パックで封止される。素材はヨウ素化合物で、関東地下の天然ガスに混在するヨウ素は世界埋蔵量の約70%が千葉県地下にあり、チリが約100年分、日本は約500~600年分とされる。技術は桐蔭横浜大学・宮坂グループの開発に由来し、このパネル形状に関する特許は、ソーラーシェアリングの新システムの開発を実施する株式会社TERRAが日本・中国・米国で取得済み。
ペロブスカイト太陽電池は、フィルム状で軽量・柔軟という特性を持ち、農業親和性に優れる。黒く光る太陽電池の総厚さは1ミリメートルで、ペロブスカイト層は0.001ミリメートル(1ミクロン)。空気と水に弱いため真空パックで封止される。素材はヨウ素化合物で、関東地下の天然ガスに混在するヨウ素は世界埋蔵量の約70%が千葉県地下にあり、チリが約100年分、日本は約500~600年分とされる。技術は桐蔭横浜大学・宮坂グループの開発に由来し、このパネル形状に関する特許は、ソーラーシェアリングの新システムの開発を実施する株式会社TERRAが日本・中国・米国で取得済み。
畑の横にあるソーラーシェアリングの試験場
●桐蔭横浜大学 宮坂研究室
●株式会社TERRA(代表取締役東光弘氏)
パネル重量は通常のガラスタイプが約11kg/枚に対し、ペロブスカイトは現状約4kg、最終的に約3kgを目標。軽量化により6m×6mの支柱間、高さ4.5mの架台設計が可能となり、100馬力超の大型農機導入が容易になる。柱本数を半減させ、材料費と施工手間を削減することで建設コストは野立てより安価となる可能性が示された。設置は水平・東西配置が推奨され、影が真横に薄く・素早く移動するため光合成への影響が小さい。南向きではなく90度直角設置の設計思想も言及された。
生産体制では、積水化学工業がシャープの大阪・堺工場を買収・改造し、2027年に年間100MW分のパネル生産ラインを完成、2030年には年間1GWへ拡張予定。福岡ドームやJR東海の防音壁など、企業からの予約が進行中。国は営農型の用途を応援しており、専用FIT復活や建設費用の約2/3補助(環境省検討)が示唆される。TERRAのみがこの形状の営農用システムを組み立て可能(特許保有)で、アッセンブリー(Assembly=複数の部品や要素を集めて一つの製品やシステムを完成させる作業)兼販売メーカーとして積水化学工業の子会社「積水ソーラーフィルム株式会社」からパネルを仕入れて組み立てる。
農業・環境面の効果として、水田のソーラーシェアリング下では地温が日中で3度、夜間で1度低下し、高温障害緩和により一等米比率が上昇する傾向が、東光弘氏が福島大学で行った研究で示された。メタン排出については福島大学およびベトナム国立大学で減少(半減~60~70%減)を確認、削減分はJクレジット化して農家の収入源となる可能性がある。ペロブスカイトは柔らかさを生かし、着脱容易なパネル開発などの将来的可能性にも触れられた。
●株式会社TERRA(代表取締役東光弘氏)
パネル重量は通常のガラスタイプが約11kg/枚に対し、ペロブスカイトは現状約4kg、最終的に約3kgを目標。軽量化により6m×6mの支柱間、高さ4.5mの架台設計が可能となり、100馬力超の大型農機導入が容易になる。柱本数を半減させ、材料費と施工手間を削減することで建設コストは野立てより安価となる可能性が示された。設置は水平・東西配置が推奨され、影が真横に薄く・素早く移動するため光合成への影響が小さい。南向きではなく90度直角設置の設計思想も言及された。
生産体制では、積水化学工業がシャープの大阪・堺工場を買収・改造し、2027年に年間100MW分のパネル生産ラインを完成、2030年には年間1GWへ拡張予定。福岡ドームやJR東海の防音壁など、企業からの予約が進行中。国は営農型の用途を応援しており、専用FIT復活や建設費用の約2/3補助(環境省検討)が示唆される。TERRAのみがこの形状の営農用システムを組み立て可能(特許保有)で、アッセンブリー(Assembly=複数の部品や要素を集めて一つの製品やシステムを完成させる作業)兼販売メーカーとして積水化学工業の子会社「積水ソーラーフィルム株式会社」からパネルを仕入れて組み立てる。
農業・環境面の効果として、水田のソーラーシェアリング下では地温が日中で3度、夜間で1度低下し、高温障害緩和により一等米比率が上昇する傾向が、東光弘氏が福島大学で行った研究で示された。メタン排出については福島大学およびベトナム国立大学で減少(半減~60~70%減)を確認、削減分はJクレジット化して農家の収入源となる可能性がある。ペロブスカイトは柔らかさを生かし、着脱容易なパネル開発などの将来的可能性にも触れられた。
農業との共生と環境への貢献
ソーラーシェアリングは、生産と環境適応の両面で農業に好影響を与える。細長パネルと遮光率1/3の設計(長島彬氏の特許)に基づき、光飽和点から導かれた必要光量を確保しつつ、高温障害を緩和。大豆・大麦の輪作や不耕起栽培(4パーミル・イニシアチブ)により土壌炭素貯留を促進し、耕さないことで土中炭素が増えて土が肥沃になる。耕起は有機物破壊とCO2放出を招くため、不耕起は地球温暖化対策としても意義が大きい。世界の温室効果ガスの約1/4は農林業部門が占め、水田メタンの削減は重要課題。日本国内では「中干し期間延長」で平均30%のメタン削減エビデンスがあり、Jクレジット化で農家収入へ還元される一方、水中生物多様性への影響懸念から避難場所(水残し)の併用などの工夫が検討されている。
ソーラーシェアリングは、生産と環境適応の両面で農業に好影響を与える。細長パネルと遮光率1/3の設計(長島彬氏の特許)に基づき、光飽和点から導かれた必要光量を確保しつつ、高温障害を緩和。大豆・大麦の輪作や不耕起栽培(4パーミル・イニシアチブ)により土壌炭素貯留を促進し、耕さないことで土中炭素が増えて土が肥沃になる。耕起は有機物破壊とCO2放出を招くため、不耕起は地球温暖化対策としても意義が大きい。世界の温室効果ガスの約1/4は農林業部門が占め、水田メタンの削減は重要課題。日本国内では「中干し期間延長」で平均30%のメタン削減エビデンスがあり、Jクレジット化で農家収入へ還元される一方、水中生物多様性への影響懸念から避難場所(水残し)の併用などの工夫が検討されている。
●「水稲栽培における中干し期間の延長」のJ-クレジット制度について(農林水産省)
●4パーミル・イニシアチブ(農林水産省)
作物適正
作物適性として、根菜類(サツマイモ、ジャガイモ、里芋、大根、人参、カブ)、ブルーベリー、お茶などが相性良好。お茶は高架台に幕を張ることで風害・蒸れを防ぎ評価が高い。不耕起用播種機は円盤で溝切り→肥料と種落下→ローラーで土被覆と工程が簡便で、架台下でも運用しやすい。パネル下は水分蒸発が抑制され、霜が降りにくく、雪解けが早い。少雨年には土壌水分保持により大豆収量が多かった一方、雨が多い年は乾きにくさから収穫遅延・機械進入困難のデメリットもある。大豆品種では「ヒューガ」が適しているとされる。
耕作放棄地の再生は地域課題の解決と直結する。2つ目の農業法人が6.45ヘクタールの農地を相場より高く購入し、農地として再生。ごみを不法投棄された畑も地元の方々との協力で3年がかりで片付け、その後購入、施設整備(倉庫、事務所、保管庫)を実施した。発電事業者が暗渠(あんきょ=水路)、明渠や粘土質改良を重機で行い、水はけ改善による収量増加を体感。耕作協賛金は低圧設備で年間8万円を出し、農業を支援、収穫物(大豆、大麦)は市場価格より高値で買い取り、地ビールや味噌へ6次化する収益モデルを確立。
水田は面積が大きく日当たり良好、道路・電線近接で立地条件が良いため、メガソーラーの展開に適している。今年秋着工の2.2MWの水田メガソーラーシェアリング事業にも参画し、来年の田植えまでに完成予定(日本初・世界初)。代表取締役・東氏の福島大学修士論文は公開されており、「水田、ソーラーシェアリング、メタン」で検索可能。農業法人の企業経営化、週休2日制、IT・AI導入、若者・シルバー人材の時間給雇用など近代的経営を志向し、全国展開する3つ目の農業法人を4~5月頃に設立、大学生を社長とする計画も進む。「農村経営業」という概念で、有機農業・企業連携・環境価値創出・観光との統合により多角的収益化を目指す。
多角的な事業モデルと全国・海外への展開
FIT依存から脱却し、相対契約(オフサイトPPA)による電力販売を拡充。低圧設備6機で非FIT・新電力と相対契約し、江戸川区(葛西図書館、中学校)や多古町旬の味産直センターへ論理的に送電。また2.7MW大型設備と低圧を含む合計15設備でも千代田区に送電している。スマートメーターにより30分単位の売電・買電を紐付け、東電パワーグリッド、新電力会社、発電事業者との特定卸供給契約で「論理的な紐付け」を実現。
RE100を目指す企業はJクレジットの環境価値取引や、多少高くても再エネ電気を購入する方向へ舵を切ると予測、中小企業にもその要件が及ぶ可能性が指摘された。
●東京都江戸川区立葛西図書館への再生可能エネルギー供給事業の取り組み(株式会社しおさい電力)
●「多古町旬の味産直センター」
●4パーミル・イニシアチブ(農林水産省)
作物適正
作物適性として、根菜類(サツマイモ、ジャガイモ、里芋、大根、人参、カブ)、ブルーベリー、お茶などが相性良好。お茶は高架台に幕を張ることで風害・蒸れを防ぎ評価が高い。不耕起用播種機は円盤で溝切り→肥料と種落下→ローラーで土被覆と工程が簡便で、架台下でも運用しやすい。パネル下は水分蒸発が抑制され、霜が降りにくく、雪解けが早い。少雨年には土壌水分保持により大豆収量が多かった一方、雨が多い年は乾きにくさから収穫遅延・機械進入困難のデメリットもある。大豆品種では「ヒューガ」が適しているとされる。
耕作放棄地の再生は地域課題の解決と直結する。2つ目の農業法人が6.45ヘクタールの農地を相場より高く購入し、農地として再生。ごみを不法投棄された畑も地元の方々との協力で3年がかりで片付け、その後購入、施設整備(倉庫、事務所、保管庫)を実施した。発電事業者が暗渠(あんきょ=水路)、明渠や粘土質改良を重機で行い、水はけ改善による収量増加を体感。耕作協賛金は低圧設備で年間8万円を出し、農業を支援、収穫物(大豆、大麦)は市場価格より高値で買い取り、地ビールや味噌へ6次化する収益モデルを確立。
水田は面積が大きく日当たり良好、道路・電線近接で立地条件が良いため、メガソーラーの展開に適している。今年秋着工の2.2MWの水田メガソーラーシェアリング事業にも参画し、来年の田植えまでに完成予定(日本初・世界初)。代表取締役・東氏の福島大学修士論文は公開されており、「水田、ソーラーシェアリング、メタン」で検索可能。農業法人の企業経営化、週休2日制、IT・AI導入、若者・シルバー人材の時間給雇用など近代的経営を志向し、全国展開する3つ目の農業法人を4~5月頃に設立、大学生を社長とする計画も進む。「農村経営業」という概念で、有機農業・企業連携・環境価値創出・観光との統合により多角的収益化を目指す。
多角的な事業モデルと全国・海外への展開
FIT依存から脱却し、相対契約(オフサイトPPA)による電力販売を拡充。低圧設備6機で非FIT・新電力と相対契約し、江戸川区(葛西図書館、中学校)や多古町旬の味産直センターへ論理的に送電。また2.7MW大型設備と低圧を含む合計15設備でも千代田区に送電している。スマートメーターにより30分単位の売電・買電を紐付け、東電パワーグリッド、新電力会社、発電事業者との特定卸供給契約で「論理的な紐付け」を実現。
RE100を目指す企業はJクレジットの環境価値取引や、多少高くても再エネ電気を購入する方向へ舵を切ると予測、中小企業にもその要件が及ぶ可能性が指摘された。
●東京都江戸川区立葛西図書館への再生可能エネルギー供給事業の取り組み(株式会社しおさい電力)
●「多古町旬の味産直センター」
地域スキームでは、SPC(特別目的会社)を地元に組成し、地域金融が融資、固定資産税を地元へ落とすモデルを推奨。千葉県市原市では「しあわせ『市原みんな幸福債』という目的別地方債の実績があるが、全国の各自治体では目的に応じた地方債が発行されている。このような仕組みで自治体が太陽光発電事業を行うことは十分考えられる。
匝瑳市は脱炭素先行地域に採択され、地域エネルギー会社「匝瑳みらい株式会社」が環境省補助金で5年間事業を展開し、水田メガソーラーシェアリングを今年秋着工する予定。
令和5年度農業白書に匝瑳市での営農型太陽光発電事例が初めて記載された。農水省の「望ましい営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」の正式ガイドラインは、
2026年3月11日時点で“最終案”が公表されており、正式版は 2026年内に確定・公表される見込み。
匝瑳市は脱炭素先行地域に採択され、地域エネルギー会社「匝瑳みらい株式会社」が環境省補助金で5年間事業を展開し、水田メガソーラーシェアリングを今年秋着工する予定。
令和5年度農業白書に匝瑳市での営農型太陽光発電事例が初めて記載された。農水省の「望ましい営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」の正式ガイドラインは、
2026年3月11日時点で“最終案”が公表されており、正式版は 2026年内に確定・公表される見込み。
●営農型太陽光発電について(農林水産省)※写真(全て)は市民エネルギーちば株式会社提供によるもの。
●匝瑳みらい株式会社
国内外の展開では、Jリーグとの連携が進み、ガイナーレ鳥取は架台下で芝生栽培(水はけの良い砂地由来)を実施、水戸ホーリーホックは架台下で大豆を栽培し、収穫大豆で大豆ミートバーガーをスタジアムで販売する計画。屋上型ソーラーシェアリングは都内で2事例(屋上緑化と併用含む)を設置。北海道余市では積雪1.5m環境で43度・35度の角度差の融雪挙動を検証し、反射光による裏面発電も確認。キウイ栽培では架台に蔓を巻き付ける方式で収穫数が120個から300個へ増加。海外ではエチオピア、UAEで3年計画の実証プラント事業をTERRAが進める予定。発電電力の一部を空気から水を取り出す機械に供し、生分解性吸水ポリマーと組み合わせて砂漠緑化を目指す。サバクトビバッタ対策(大量にバッタが発生する現象)として架台に網を張ることで作物防御も可能。営農型太陽光発電(Agrivoltaics、アグリボルタイクス)は海外でも注目されており、国際会議はこれまでに6回開催されている。
コスト・制度面では、現在の低圧設備の初期投資は約1600万円、系統接続費約100万円で合計約1700万円が目安。過去のFIT18円以上では採算が取れたが、現在のFIT約10円では事業化が困難なため建設コスト半減が必要。補助金(建設費1/2)を活用したオフサイトPPAであれば事業採算性が見込める。東京都は通年で補助金募集を行い、千葉・埼玉・神奈川等に設備を設け都内事業者へ電気を供給する場合に活用可能。固定資産税は低圧設備で初年度約12万円、減価償却に伴い減少。農地賃料は1平方メートルあたり年間20円、約2000平方メートルで年間約4万円。耕作協賛金は年間約8万円、地域協賛金は年間6~4万円(いずれも低圧設備の場合)。日本の農家の助成金比率は約38%と国際比較で低く、構造的課題が指摘される中、農業を資材・再エネ・環境価値・企業連携・観光を統合する「農村経営業」へ転換する必要性が強調された。
●オフサイトPPA=企業や自治体などの需要家が、自社の敷地外に設置された再生可能エネルギー発電設備から、送配電ネットワークを通じて電力を調達する仕組み。初期費用なしで再生可能エネルギーを導入できCO2排出量削減に貢献できる仕組み。
●匝瑳みらい株式会社
国内外の展開では、Jリーグとの連携が進み、ガイナーレ鳥取は架台下で芝生栽培(水はけの良い砂地由来)を実施、水戸ホーリーホックは架台下で大豆を栽培し、収穫大豆で大豆ミートバーガーをスタジアムで販売する計画。屋上型ソーラーシェアリングは都内で2事例(屋上緑化と併用含む)を設置。北海道余市では積雪1.5m環境で43度・35度の角度差の融雪挙動を検証し、反射光による裏面発電も確認。キウイ栽培では架台に蔓を巻き付ける方式で収穫数が120個から300個へ増加。海外ではエチオピア、UAEで3年計画の実証プラント事業をTERRAが進める予定。発電電力の一部を空気から水を取り出す機械に供し、生分解性吸水ポリマーと組み合わせて砂漠緑化を目指す。サバクトビバッタ対策(大量にバッタが発生する現象)として架台に網を張ることで作物防御も可能。営農型太陽光発電(Agrivoltaics、アグリボルタイクス)は海外でも注目されており、国際会議はこれまでに6回開催されている。
コスト・制度面では、現在の低圧設備の初期投資は約1600万円、系統接続費約100万円で合計約1700万円が目安。過去のFIT18円以上では採算が取れたが、現在のFIT約10円では事業化が困難なため建設コスト半減が必要。補助金(建設費1/2)を活用したオフサイトPPAであれば事業採算性が見込める。東京都は通年で補助金募集を行い、千葉・埼玉・神奈川等に設備を設け都内事業者へ電気を供給する場合に活用可能。固定資産税は低圧設備で初年度約12万円、減価償却に伴い減少。農地賃料は1平方メートルあたり年間20円、約2000平方メートルで年間約4万円。耕作協賛金は年間約8万円、地域協賛金は年間6~4万円(いずれも低圧設備の場合)。日本の農家の助成金比率は約38%と国際比較で低く、構造的課題が指摘される中、農業を資材・再エネ・環境価値・企業連携・観光を統合する「農村経営業」へ転換する必要性が強調された。
●オフサイトPPA=企業や自治体などの需要家が、自社の敷地外に設置された再生可能エネルギー発電設備から、送配電ネットワークを通じて電力を調達する仕組み。初期費用なしで再生可能エネルギーを導入できCO2排出量削減に貢献できる仕組み。
匝瑳市の耕作放棄地から再生した農地
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の導入における課題と展望
この項目は、素朴な疑問として「エネルギーから経済を考えるネットワーク会議」事務局長・山口伸より、投げかけられて、宮下氏より解説いただいたものだ。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の導入プロセスに関する包括的な議論をまとめたものである。農地法に基づく規制緩和の経緯、地域ごとの導入障壁、使用するパネルの技術的・コスト的課題、ペロブスカイト太陽電池などの将来技術、そして系統接続という根本的なインフラ問題まで、多岐にわたるテーマを網羅している。
規制緩和の経緯と財務的影響
営農型太陽光発電の根幹には、農地の上にソーラーパネルの支柱を設置するため、農業委員会から「農地の一時転用許可」を得る必要がある。この許可は、支柱が立つ部分の土地を農地以外の目的で使用するための申請であり、農地法上、本来は構造物を建てられない農地での事業を可能にするものである。
当初、この許可は原則として3年ごとに更新が必要であった。しかし、真摯に農業と発電事業に取り組む事業者にとってこの3年ごとの更新は負担が大きいとの声が上がり、農林水産省への要望の結果、規制が緩和された。現在では、以下の3つの条件のうちいずれか1つを満たせば、更新期間が10年に延長される。
1. 担い手農家・認定農家が自己所有の農地で、発電事業者として実施する場合
2. 耕作放棄地を再生し、農地として復旧させる目的で実施する場合
3. 第2種農地または第3種農地で実施する場合
(第2種農地=市街化が見込まれる区域にある、比較的小規模で生産性の低い農地。第3種農地=市街地の中や市街化が著しい区域にある農地を指し、原則として農地転用が許可される区分)
この「10年への緩和」は、事業の財務面に極めて大きな好影響をもたらした。従来、3年という短期間では事業の継続性が不透明であると判断され、金融機関はリスクが高いとして融資に消極的だった。しかし、許可期間が10年になったことで、金融機関は最長10年のローンを組むことが可能となり、事業の資金調達が格段に容易になった。これは事業推進における大きな前進である。
さらに、農業法人が営農型太陽光発電を行う際の規制も緩和された。以前は、農業法人の収入の半分以上が農業関連収入でなければならないという規定があり、売電収入がそれを上回ってしまうと事業を実施できないという障壁があった。これも事業者の要望が通り、現在では農業法人が所有する農地で営農型太陽光発電を行う場合、その売電収入を「農業関連収入」として算入できるようになった。これにより、農業法人は安定した売電収入を確保し、経営基盤の強化を図ることが可能になった。
導入における実践的課題と地域差
営農型太陽光発電の導入には、規制緩和が進んだ一方で、実践的な課題が依然として存在する。特に「収量が2割以上減少してはならない」というルールの解釈には、多くの誤解が見られる。このルールの本来の趣旨は、支柱の設置によって物理的に作付けできなくなる面積(例えば畝が10本から8本に減るなど)を考慮したものであり、パネルがない場所と同等の単収を「残りの8割の面積で達成すること」を求めるものである。パネルによる日照減で全体の収量が2割減ることとは意味が異なるが、この真意は農業委員会の担当者にも十分に理解されていないことが多い。
また、事業の許認可権を持つ農業委員会の対応には、地域によって大きな「温度差」がある。ソーラーシェアリングの発祥地であり実績も多い千葉県では協力的な委員会が多い一方、他の地域では「太陽光発電」と聞いただけで拒否的な反応を示す委員会も存在する。委員会の高齢化率が69%に達するというデータもあり、前例のない新しい取り組みへの保守的な姿勢が、申請プロセスの障壁となることがある。実際に、申請から許可が下りるまでに1年半を要した事例や、作物が育つ証拠としてA4用紙400ページ分のエビデンス提出を求められた事例も報告されている。地域で最初の導入者となる場合は、委員会側にノウハウがないため、他地域への問い合わせや調査に時間がかかり、プロセスが長期化する傾向がある。
一方で、不適切な事業者への対策も強化されている。2024年4月1日から、従来の農水省通達が「省令」へと格上げされ、罰則規定が設けられた。これにより、発電事業を主目的とし、農業を疎かにしていると判断された300件を超える不適切案件に対して、売電収入の振込停止や改善命令が出されている。改善が見られない場合はFIT(固定価格買取制度)の認定が失効する。今後は、望ましい事業を推進し、不適切な事業を排除するための評価基準として、申請案件を点数で評価する「採点方式」の導入も検討されており、より公正な審査が進むことが期待される。
パネルの技術仕様・コストと調達の課題
営農型太陽光発電で最適な農業環境を維持するためには、光を適切に透過させる「細型パネル」の使用が推奨されるが、これには特有の技術的・コスト的課題が伴う。この細型パネルは特注生産であり、汎用的な大型パネルと比較してワット単価が約2.5倍と非常に高価である。さらに円安の影響で、ドル建てで決済される部材の価格は高騰している。
現在、この2列セルの細型パネルを常時生産・在庫しているメーカーは世界に一社もなく、全て注文に応じて既存の大型パネルの製造ラインを一度停止し、組み替えて生産される。この非効率な生産体制が、価格が下がらない大きな要因となっている。事業者は、中国のパネルメーカーと代理店を介して直接交渉し、生産を依頼している。
さらに、発電効率を最大化するため、事業者側からメーカーに対して仕様変更の要望も出している。例えば、両面発電パネルにおいて、裏面の発電を阻害するジャンクションボックス(電線同士を結合、分岐、中継する際に用いる端子、端末の保護箱)の位置をセルの外側に移動させることや、パネル下の影を減らすために、フレームの形状を剛性の高いL字型から、厚みを持たせたストレート形状へ変更することなど、細部にわたる改良を求めている。これらの追加要求もコストを押し上げる一因となっているが、発電性能を最大限に引き出すためには不可欠な工夫である。将来的に、営農型太陽光発電の需要が拡大し、細型パネル専用の生産ラインが設けられれば、大幅なコストダウンが期待できる。
次世代技術としてのペロブスカイト太陽電池への期待
現行のシリコンパネルが抱える課題を克服する次世代技術として、ペロブスカイト太陽電池への期待が高まっている。この技術は国産で開発が進められており、営農型太陽光発電との親和性が非常に高い。製造技術の特性上、初期に生産されるのは大面積化が難しい「幅の狭い」形状のものであり、これはまさに営農型が求める仕様と合致する。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性に富み、方角や設置角度への依存度が低いという大きな利点を持つ。そのため、カタログ上の変換効率が結晶シリコン系より低くても(例:15%)、曇天時などでも効率的に発電できるため、年間の「実発電量」では同等以上になる可能性が見込まれている。
さらに、TERA社が特許を持つ飛行機の翼のような形状に加工することで、風を受け流す構造が実現できる。これにより、現行パネルの耐風速が50m/sであるのに対し、ペロブスカイトでは100m/sの強風にも耐えうると期待されている。設置方法も、従来の南向き30度の傾斜設置ではなく、影の移動が自然な「東西向きの水平設置」が可能となり、農業への影響をさらに低減できる可能性がある。国も営農型での利用に際して専用のFIT(固定価格買取制度)や補助金を検討しており、日本の主要な埋蔵資源であるヨウ素(原料の一つ)を背景に、シリコンパネルで海外に後れを取った轍を踏むことなく、国産技術として普及することが強く望まれている。
現場での運用最適化と地域社会との関係構築
発電効率と農業生産を両立させるため、現場ではデータに基づいた運用最適化が行われている。例えば、日本ではパネルの設置角度は南向き30度が最適とされるが、実際の農地形状に合わせて南東または南西向きに設置した設備で2年間の実証実験を行った結果、25度が最も発電効率が高いことが判明した。現在はこの25度を基準としており、この角度は雨によるパネルの自動洗浄効果も期待できる。また、支柱の高さを3.3m、柱と柱の間隔を4.2m~4.5mに設計することで、北海道などの大規模農業で使われる100馬力級を除く、60馬力級のトラクターやコンバインが問題なく作業できる空間を確保している。
事業の成功には、こうした技術的な最適化以上に、地域社会との良好な関係構築が不可欠である。発電事業者が農業に不慣れな場合、地元の農家や地主との合意形成は極めて難しい。円滑に進める鍵は、計画の初期段階から地元の農家や地域の名士を事業パートナーとして巻き込むことである。顔なじみの人物が介在することで、信頼関係が生まれ、休耕地などの土地利用に関する交渉が格段に進めやすくなる。
事業者自身も、ただ事業を行うだけでなく、地域の一員として溶け込む努力が求められる。住民票を移し、地域の清掃活動や草刈り、さらには飲み会やゴルフといった付き合いにも積極的に参加し、「この土地に骨を埋める覚悟」を示すことで、初めて保守的な地域社会からの理解と協力を得ることができる。
再生可能エネルギー普及の根幹を揺るがす系統接続問題
営農型太陽光発電を含む全ての再生可能エネルギー事業にとって、最大の障壁となっているのが「系統接続問題」である。発電設備を建設しても、その電気を電力網に接続できなければ売電事業は成り立たない。ヨーロッパでは、国策として再生可能エネルギーの導入を推進し、国境を越えた電力融通が可能な太い送電網が整備されている。
対照的に、日本では各電力会社が独立採算で運営してきた歴史的経緯から地域間の連系線が細く、さらに東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で周波数が異なるため、広域での電力融通が極めて困難な構造になっている。加えて、実際には稼働していない原子力発電所のために送電網の容量が確保されたままになっており、再生可能エネルギーが接続できる空き容量が不足しているとされている。
この結果、事業者が接続を申請しても、数年にわたる長期間の待ち時間が発生している。特に千葉県では高圧案件の接続に40ヶ月(3年4ヶ月)待ちという状況であり、メガソーラー級の計画が事実上不可能な状態にある。これは一企業の努力では解決不可能な問題であり、電力会社の裁量に任せるのではなく、国が責任を持って送電網の増強やインフラ整備に投資する「国策」として取り組むことが不可欠である。この根本的な問題が解決されない限り、日本の再生可能エネルギーの普及は大きく遅れ、国際的な競争力を失うことになりかねない。
この項目は、素朴な疑問として「エネルギーから経済を考えるネットワーク会議」事務局長・山口伸より、投げかけられて、宮下氏より解説いただいたものだ。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の導入プロセスに関する包括的な議論をまとめたものである。農地法に基づく規制緩和の経緯、地域ごとの導入障壁、使用するパネルの技術的・コスト的課題、ペロブスカイト太陽電池などの将来技術、そして系統接続という根本的なインフラ問題まで、多岐にわたるテーマを網羅している。
規制緩和の経緯と財務的影響
営農型太陽光発電の根幹には、農地の上にソーラーパネルの支柱を設置するため、農業委員会から「農地の一時転用許可」を得る必要がある。この許可は、支柱が立つ部分の土地を農地以外の目的で使用するための申請であり、農地法上、本来は構造物を建てられない農地での事業を可能にするものである。
当初、この許可は原則として3年ごとに更新が必要であった。しかし、真摯に農業と発電事業に取り組む事業者にとってこの3年ごとの更新は負担が大きいとの声が上がり、農林水産省への要望の結果、規制が緩和された。現在では、以下の3つの条件のうちいずれか1つを満たせば、更新期間が10年に延長される。
1. 担い手農家・認定農家が自己所有の農地で、発電事業者として実施する場合
2. 耕作放棄地を再生し、農地として復旧させる目的で実施する場合
3. 第2種農地または第3種農地で実施する場合
(第2種農地=市街化が見込まれる区域にある、比較的小規模で生産性の低い農地。第3種農地=市街地の中や市街化が著しい区域にある農地を指し、原則として農地転用が許可される区分)
この「10年への緩和」は、事業の財務面に極めて大きな好影響をもたらした。従来、3年という短期間では事業の継続性が不透明であると判断され、金融機関はリスクが高いとして融資に消極的だった。しかし、許可期間が10年になったことで、金融機関は最長10年のローンを組むことが可能となり、事業の資金調達が格段に容易になった。これは事業推進における大きな前進である。
さらに、農業法人が営農型太陽光発電を行う際の規制も緩和された。以前は、農業法人の収入の半分以上が農業関連収入でなければならないという規定があり、売電収入がそれを上回ってしまうと事業を実施できないという障壁があった。これも事業者の要望が通り、現在では農業法人が所有する農地で営農型太陽光発電を行う場合、その売電収入を「農業関連収入」として算入できるようになった。これにより、農業法人は安定した売電収入を確保し、経営基盤の強化を図ることが可能になった。
導入における実践的課題と地域差
営農型太陽光発電の導入には、規制緩和が進んだ一方で、実践的な課題が依然として存在する。特に「収量が2割以上減少してはならない」というルールの解釈には、多くの誤解が見られる。このルールの本来の趣旨は、支柱の設置によって物理的に作付けできなくなる面積(例えば畝が10本から8本に減るなど)を考慮したものであり、パネルがない場所と同等の単収を「残りの8割の面積で達成すること」を求めるものである。パネルによる日照減で全体の収量が2割減ることとは意味が異なるが、この真意は農業委員会の担当者にも十分に理解されていないことが多い。
また、事業の許認可権を持つ農業委員会の対応には、地域によって大きな「温度差」がある。ソーラーシェアリングの発祥地であり実績も多い千葉県では協力的な委員会が多い一方、他の地域では「太陽光発電」と聞いただけで拒否的な反応を示す委員会も存在する。委員会の高齢化率が69%に達するというデータもあり、前例のない新しい取り組みへの保守的な姿勢が、申請プロセスの障壁となることがある。実際に、申請から許可が下りるまでに1年半を要した事例や、作物が育つ証拠としてA4用紙400ページ分のエビデンス提出を求められた事例も報告されている。地域で最初の導入者となる場合は、委員会側にノウハウがないため、他地域への問い合わせや調査に時間がかかり、プロセスが長期化する傾向がある。
一方で、不適切な事業者への対策も強化されている。2024年4月1日から、従来の農水省通達が「省令」へと格上げされ、罰則規定が設けられた。これにより、発電事業を主目的とし、農業を疎かにしていると判断された300件を超える不適切案件に対して、売電収入の振込停止や改善命令が出されている。改善が見られない場合はFIT(固定価格買取制度)の認定が失効する。今後は、望ましい事業を推進し、不適切な事業を排除するための評価基準として、申請案件を点数で評価する「採点方式」の導入も検討されており、より公正な審査が進むことが期待される。
パネルの技術仕様・コストと調達の課題
営農型太陽光発電で最適な農業環境を維持するためには、光を適切に透過させる「細型パネル」の使用が推奨されるが、これには特有の技術的・コスト的課題が伴う。この細型パネルは特注生産であり、汎用的な大型パネルと比較してワット単価が約2.5倍と非常に高価である。さらに円安の影響で、ドル建てで決済される部材の価格は高騰している。
現在、この2列セルの細型パネルを常時生産・在庫しているメーカーは世界に一社もなく、全て注文に応じて既存の大型パネルの製造ラインを一度停止し、組み替えて生産される。この非効率な生産体制が、価格が下がらない大きな要因となっている。事業者は、中国のパネルメーカーと代理店を介して直接交渉し、生産を依頼している。
さらに、発電効率を最大化するため、事業者側からメーカーに対して仕様変更の要望も出している。例えば、両面発電パネルにおいて、裏面の発電を阻害するジャンクションボックス(電線同士を結合、分岐、中継する際に用いる端子、端末の保護箱)の位置をセルの外側に移動させることや、パネル下の影を減らすために、フレームの形状を剛性の高いL字型から、厚みを持たせたストレート形状へ変更することなど、細部にわたる改良を求めている。これらの追加要求もコストを押し上げる一因となっているが、発電性能を最大限に引き出すためには不可欠な工夫である。将来的に、営農型太陽光発電の需要が拡大し、細型パネル専用の生産ラインが設けられれば、大幅なコストダウンが期待できる。
次世代技術としてのペロブスカイト太陽電池への期待
現行のシリコンパネルが抱える課題を克服する次世代技術として、ペロブスカイト太陽電池への期待が高まっている。この技術は国産で開発が進められており、営農型太陽光発電との親和性が非常に高い。製造技術の特性上、初期に生産されるのは大面積化が難しい「幅の狭い」形状のものであり、これはまさに営農型が求める仕様と合致する。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性に富み、方角や設置角度への依存度が低いという大きな利点を持つ。そのため、カタログ上の変換効率が結晶シリコン系より低くても(例:15%)、曇天時などでも効率的に発電できるため、年間の「実発電量」では同等以上になる可能性が見込まれている。
さらに、TERA社が特許を持つ飛行機の翼のような形状に加工することで、風を受け流す構造が実現できる。これにより、現行パネルの耐風速が50m/sであるのに対し、ペロブスカイトでは100m/sの強風にも耐えうると期待されている。設置方法も、従来の南向き30度の傾斜設置ではなく、影の移動が自然な「東西向きの水平設置」が可能となり、農業への影響をさらに低減できる可能性がある。国も営農型での利用に際して専用のFIT(固定価格買取制度)や補助金を検討しており、日本の主要な埋蔵資源であるヨウ素(原料の一つ)を背景に、シリコンパネルで海外に後れを取った轍を踏むことなく、国産技術として普及することが強く望まれている。
現場での運用最適化と地域社会との関係構築
発電効率と農業生産を両立させるため、現場ではデータに基づいた運用最適化が行われている。例えば、日本ではパネルの設置角度は南向き30度が最適とされるが、実際の農地形状に合わせて南東または南西向きに設置した設備で2年間の実証実験を行った結果、25度が最も発電効率が高いことが判明した。現在はこの25度を基準としており、この角度は雨によるパネルの自動洗浄効果も期待できる。また、支柱の高さを3.3m、柱と柱の間隔を4.2m~4.5mに設計することで、北海道などの大規模農業で使われる100馬力級を除く、60馬力級のトラクターやコンバインが問題なく作業できる空間を確保している。
事業の成功には、こうした技術的な最適化以上に、地域社会との良好な関係構築が不可欠である。発電事業者が農業に不慣れな場合、地元の農家や地主との合意形成は極めて難しい。円滑に進める鍵は、計画の初期段階から地元の農家や地域の名士を事業パートナーとして巻き込むことである。顔なじみの人物が介在することで、信頼関係が生まれ、休耕地などの土地利用に関する交渉が格段に進めやすくなる。
事業者自身も、ただ事業を行うだけでなく、地域の一員として溶け込む努力が求められる。住民票を移し、地域の清掃活動や草刈り、さらには飲み会やゴルフといった付き合いにも積極的に参加し、「この土地に骨を埋める覚悟」を示すことで、初めて保守的な地域社会からの理解と協力を得ることができる。
再生可能エネルギー普及の根幹を揺るがす系統接続問題
営農型太陽光発電を含む全ての再生可能エネルギー事業にとって、最大の障壁となっているのが「系統接続問題」である。発電設備を建設しても、その電気を電力網に接続できなければ売電事業は成り立たない。ヨーロッパでは、国策として再生可能エネルギーの導入を推進し、国境を越えた電力融通が可能な太い送電網が整備されている。
対照的に、日本では各電力会社が独立採算で運営してきた歴史的経緯から地域間の連系線が細く、さらに東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で周波数が異なるため、広域での電力融通が極めて困難な構造になっている。加えて、実際には稼働していない原子力発電所のために送電網の容量が確保されたままになっており、再生可能エネルギーが接続できる空き容量が不足しているとされている。
この結果、事業者が接続を申請しても、数年にわたる長期間の待ち時間が発生している。特に千葉県では高圧案件の接続に40ヶ月(3年4ヶ月)待ちという状況であり、メガソーラー級の計画が事実上不可能な状態にある。これは一企業の努力では解決不可能な問題であり、電力会社の裁量に任せるのではなく、国が責任を持って送電網の増強やインフラ整備に投資する「国策」として取り組むことが不可欠である。この根本的な問題が解決されない限り、日本の再生可能エネルギーの普及は大きく遅れ、国際的な競争力を失うことになりかねない。
再エネ転換:営農型太陽光発電が日本製造業の生き残る道
●サプライチェーン排出量全般 (環境省)
再エネ確保の戦略的評価:選択と集中
1. 課題:不可避なサプライチェーンからの圧力
現状(Status Quo): グローバル企業はRE100(事業活動で消費する電力を100%再エネで調達する目標)を掲げ、サプライチェーン全体にその遵守を求めている。
ギャップ(Gap/Pain): Appleは2030年を期限とし、達成できないサプライヤーからの部品調達を停止する方針を明確に示している。これは単なる要請ではなく、取引継続の必須条件である。
解決策(Solution): 日本企業は事業を継続するために、安定供給可能で、かつ企業イメージを損なわない再エネ電力を早急に確保する必要がある。
2. 比較分析:各再エネ源の制約
各発電方法を比較検討すると、それぞれに決定的な制約が存在するため、選択肢は自ずと絞られる。
風力: 安定した風況が得られる場所が地理的に限定される。洋上風力はコストが高く、すでに事業撤退の事例もある。
小水力: 水利権の確保が前提となり、新規参入が極めて困難である。
地熱: 温泉街など、地域コミュニティの合意形成が不可欠であり、開発に時間がかかる。
バイオマス: 燃料となる資材の安定的かつ継続的な供給体制の構築が課題となる。
山間部太陽光: 森林伐採などを伴うため、環境破壊のイメージが強く、企業のブランド価値を毀損するリスクがある。
●サプライチェーン排出量全般 (環境省)
再エネ確保の戦略的評価:選択と集中
1. 課題:不可避なサプライチェーンからの圧力
現状(Status Quo): グローバル企業はRE100(事業活動で消費する電力を100%再エネで調達する目標)を掲げ、サプライチェーン全体にその遵守を求めている。
ギャップ(Gap/Pain): Appleは2030年を期限とし、達成できないサプライヤーからの部品調達を停止する方針を明確に示している。これは単なる要請ではなく、取引継続の必須条件である。
解決策(Solution): 日本企業は事業を継続するために、安定供給可能で、かつ企業イメージを損なわない再エネ電力を早急に確保する必要がある。
2. 比較分析:各再エネ源の制約
各発電方法を比較検討すると、それぞれに決定的な制約が存在するため、選択肢は自ずと絞られる。
風力: 安定した風況が得られる場所が地理的に限定される。洋上風力はコストが高く、すでに事業撤退の事例もある。
小水力: 水利権の確保が前提となり、新規参入が極めて困難である。
地熱: 温泉街など、地域コミュニティの合意形成が不可欠であり、開発に時間がかかる。
バイオマス: 燃料となる資材の安定的かつ継続的な供給体制の構築が課題となる。
山間部太陽光: 森林伐採などを伴うため、環境破壊のイメージが強く、企業のブランド価値を毀損するリスクがある。
3. 結論:営農型太陽光発電への集中
消去法で評価すると「営農型太陽光発電」が最も実行可能かつ合理的な選択肢として残る。日本の農地の10%はすでに耕作放棄地となっており、この未利用資産を活用するだけで国家レベルの電力需要のかなりの部分を賄える。これは、環境負荷を最小限に抑えつつ、サプライチェーンからの要求に応えるための、現時点で最も有力な戦略的解である。
●「荒廃農地の発生防止・解消等」(農林水産省)
●資料「環境配慮型ソーラーシェアリング」
消去法で評価すると「営農型太陽光発電」が最も実行可能かつ合理的な選択肢として残る。日本の農地の10%はすでに耕作放棄地となっており、この未利用資産を活用するだけで国家レベルの電力需要のかなりの部分を賄える。これは、環境負荷を最小限に抑えつつ、サプライチェーンからの要求に応えるための、現時点で最も有力な戦略的解である。
●「荒廃農地の発生防止・解消等」(農林水産省)
●資料「環境配慮型ソーラーシェアリング」