1. 関連公表|国連特別報告書 日本語版発表(自然エネルギー財団、9/11)
国連が本年7月22日に公開した特別報告書※の日本語版「転換の好機をつかむ:再生可能エネルギー・効率化・電化がエネルギー新時代を加速する」を自然エネルギー財団が発表しました。
この報告書は、パリ協定採択以降の10年間、自然エネルギー発電コストが激減し、急速な拡大を遂げたことにより、世界が化石燃料に依存したエネルギーシステムから離脱する「歴史の中でも類を見ない決定的な瞬間に立っている」と指摘しています。
また、エネルギー転換を加速させるための6つの主要な行動を提起し、その一つとして、巨大IT企業に対して、AIやデータセンターなどで急拡大する新たな電力需要は自然エネルギーで供給することを求めています。
自然エネルギー拡大に向け様々な課題に直面する日本にとって、今後の政策の方向性を考える上で必見の報告書です。
※原文タイトル Seizing the moment of opportunity: supercharging the new energy era of renewables, efficiency, and electrification
→日本語版報告書はこちら
2.2025年8月の気候変動・脱炭素に関する国内外のニュース
1. 自然災害の保険金支払い、上期800億ドル 過去10年平均の2倍
https://jp.reuters.com/world/us/44LG4EWJVJLUHNIYGICRHHS3VM-2025-08-06/(ロイター、2025年8月6日)
スイス再保険研究所によると、2025年上半期の世界の自然災害による保険金支払い額は推定800億ドルに達しました。カリフォルニア州の山火事や米国での激しい雷雨が主因で、過去10年平均のほぼ2倍となる水準となっています。保険業界が気候変動リスクの増大に直面していることが浮き彫りとなっています。
2. 8月8日は「暑すぎる夏を終わらせる日」企業団体が記念日登録
https://www.asahi.com/articles/AST8833ZVT88UTFL00VM.html?iref=reporter-bio_timeline
(朝日新聞、2025年8月8日)
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、8月8日を「暑すぎる夏を終わらせる日」として、日本記念日協会に登録しました。猛暑を気候変動の問題ととらえ、「自分ごと」として考えるきっかけにしてもらいたいとしています。温暖化を抑えるためには「個人や企業の意識、がんばり」のみでは限界があり、「脱炭素をすることが合理的だ」という社会や政策の転換が必要だとし、世論が政策を支持・後押しすることが重要だと訴えています。
3. 資源量は世界3位…次世代地熱実用化へ、経産省の本気度
https://newswitch.jp/p/46637 (ニュースイッチ、2025年8月13日)
政府は今秋までに、2030年代の実用化を目指す次世代型地熱発電のロードマップを策定します。日本は地熱資源量で世界3位のポテンシャルを持ちながら、開発は限定的にとどまっています。掘削コスト削減や新技術開発への支援を通じて民間投資を促し、天候に左右されない脱炭素電源の活用を進める方針です。
4. EU ことしの域内の山火事の焼失面積 例年の2倍以上に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250814/k10014893881000.html(NHK、2025年8月14日)
スペインやポルトガルなどヨーロッパ南部では連日の熱波で山火事が相次いでいます。今年の焼失面積は例年の2倍以上の約44万ヘクタールで、東京都のおよそ2倍の広さです。スペインでは消防隊員を含む6人が犠牲になっています。山火事はギリシャやフランスでも発生しており、欧米メディアは気候変動による高温や乾燥が状況を深刻化させていると報じています。
5. 再生可能エネルギーへの移行:重要な分岐点に立つ中国
https://e360.yale.edu/features/lauri-myllyvirta-interview (英語)
(Yale Environment 360、2025年8月21日)
中国は、再生可能エネルギーへの移行において転換点に立っています。これまで、中国は化石燃料と再生可能エネルギーの両方に積極的に投資してきましたが、昨年から風力発電と太陽光発電が石炭火力発電を置き換え始め、目標より前倒しで二酸化炭素排出量がピークを越した可能性が出てきました。今後の課題は、電力グリッドの改革と石炭火力発電所の段階的な廃止です。
6. 気候目標を持つ企業、2023年以降で3倍超に:SBTi
https://www.esgdive.com/news/companies-with-climate-targets-have-more-than-tripled-since-2023-sbti/758280/(英語)
(ESG Dive、2025年8月21日)
SBT目標を設定した企業が大幅に増加しました。2023年末から2025年第2四半期までの18か月間で、Near-termと Net-zero 目標の両方を設定した企業が583社から1,904社に3倍以上増加しました。Near-term目標のみを設定した企業も3,622社から6,378社に倍増し、企業は気候リスク管理と低炭素経済への適応に益々前向きに取り組むようになっています。
7. トランプ政権の気候変動報告書に批判続出 誤りの指摘相次ぐ、訴訟も
https://www.asahi.com/articles/AST8X238BT8XUHBI00XM.html?iref=pc_ss_date_art
icle (朝日新聞、2025年8月29日、有料記事)
7月下旬に米エネルギー省が気候変動問題に関する報告書を公表しました。気候変動問題に懐疑的な主張が含まれており、誤りを指摘する声が相次いでいます。トランプ政権が政策変更の根拠に使う狙いがありますが、作成プロセスにも疑義が出ており、環境団体が政府を提訴する事態にまで発展しています。
8. ソニーG「調達先は再エネ100%に」 30年度、自社向け製品生産で要請
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC285PT0Y5A820C2000000/?msockid=171ea96
c53256d312f4aba6d52d76cc5(日本経済新聞、2025年8月29日、有料記事)
ソニーグループ(JCIメンバー)は、主要取引先に対し、同グループ各社に供給する製品の製造に使用する電力を2030年度までに100%再生可能エネルギーに切り替えるよう働きかける方針を発表しました。義務化ではないものの、取引先の選定に影響する可能性があります。温暖化ガス排出削減の歩みを止めない姿勢を示しています。
9. 集合住宅でも安価に利用可能な「プラグイン・ソーラー・パネル」、欧州から米国へ、日本で広がるのはいつ?
https://comemo.nikkei.com/n/n5566c2cea984(日経COMEMO、2025年8月30日)
海外では「プラグイン・ソーラーパネル」と呼ばれる、従来の太陽光発電の常識を覆すシステムが急速に普及しています。ベランダや庭にソーラーパネルを設置し、発電した電気を家庭用コンセントから家の電力系統に流し込む仕組みです。特別な工事は不要で、ドイツでは爆発的に広がっています。
10. トランプ政権下で閉鎖された気候変動ウェブサイトに、科学者たちが新たな命を吹き込む
https://www.theguardian.com/environment/2025/aug/30/climate-gov-website-trump(英語)(Guardian、2025年8月30日)
トランプ政権下でアクセスが制限され、制作チームが解雇された米国の気候情報サイト climate.gov が、元スタッフらのボランティアによって climate.us として再生されることになりました。新サイトは従来の気候科学の解説に加え、地方自治体向けの洪水リスクマップ作成など実用的サービスも提供する予定です。
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【発信元】
気候変動イニシアティブ(JCI)事務局
activities@japanclimate.org