エネ経会議では私が会頭を務める小田原箱根商工会議所と連携しながら、経済産業省の中小企業を対象とする省エネ診断の補助事業である「省エネお助け隊」を展開しています。
エネ経会議ではその前身のプログラムである地域プラットフォーム時代からこれまで9年間で約150社ほどの省エネ診断をしてきました。省エネ診断の受診に手を挙げてくれる中小企業を探すのに毎年苦労しての結果です。中小企業の総数からしたら大海に水一点という感じです。
私たち中小企業の経営者は人手不足と賃上げ、原材料の価格高騰など厳しい経営環境の中で、なかなかエネルギーまで手が回らないというのが実態です。ではどういう状況に置かれたら動くかを考えると、ざっくばらんな言い方をすれば、「それをやれば儲かる」か、「やらないとまずい」の2つだと思うのです。
そこで「やらないとまずい」=義務化はどうかと考えました。
義務化のためには支援が必要です。ですから省エネ診断にかかる費用は国に負担してもらいます。省エネ診断は多くとも一件約20万円ほどでできます。全国の中小企業は約300万社ですから、必要な予算は6,000億円、一見膨大な金額に見えますが、300万社の省エネ診断は到底単年ではできませんので、複数年かかります。3年だと年100万社=2800社/日、5年なら60万社=1600社/日です。これでも相当な数ですので、省エネ診断をできる体制の整備が必要で、これも新しいビジネスになります。
さて費用ですが、今、国ではGXで官民で150兆円、その呼び水として官で20兆円を用意すると言っています。6,000億円は20兆円の3%。そのくらいの予算を振り向けられないものでしょうか? 最先端の技術開発も必要でしょうが、今ある既に使える技術を使い、具体的な成果が上がることにお金を使ったらいいと思います。私たち中小企業の経営者が日々頭を悩ます「投資と回収」や「費用対効果」とはそういうものではないでしょうか?
すべての中小企業がエネルギーの無駄を知り削減の方向が見えたら、次にはその対策の実行です。そのための補助金の必要です。これまでの補助金は各省庁からバラバラに出ることもあり、その情報をタイミングよく取って獲得につなげることは、エネルギーの専門家でもなく日々の業務に忙殺されている中小企業の経営者にとっては苦手な分野です。中小企業が自社のエネルギーの課題を具体的に見える化し、その解決のための方策を明確に認識し、そのための使いやすく補助金を用意するという一連の支援策を国がリードすべきです。
省エネ診断の結果、例えば、照明のLED化、空調の更新、冷蔵庫の入れ替え、断熱工事などは地域の中小企業の仕事につながります。補助金がしっかり地域の会社に流れ地域でそのお金が循環することにも繫がります。
使うエネルギーを減らすことは、気候変動、脱炭素の対策としても、個々の企業の経費削減策としても、地域で廻るお金を増やす手段=地域経済の活性化策としてもまさに一石三鳥の効果が期待できます。
国でエネルギーを司る優秀な政治家、官僚にぜひこの声を聴いて政策として実現して欲しいと強く願います。