今の株高は、円安を追い風に業績を伸ばしている一部の大企業の株を外国人投資家や一部の富裕層などが投機目的で買っていることの結果でありましょう。多くの専門家は、日銀の「異次元緩和」での国債や上場投資信託(ETF)の大量買いの影響も大きいことを指摘しています。一部の大企業だけを観たこの数字は経済の実態を反映したものではなく、「株価は金融の世界の話で、実態経済とは別もの」と言われるゆえんです。
 
ゼロ金利(欧米との金利差)が引き起こす円安の影響で、私たち中小企業は、原材料やエネルギーコストの上昇に苦しみ、賃金を上げたくとも上げられず四苦八苦しているというのが現実です。もちろん、借金をしていれば金利が低いことはありがたいことは当たり前ですが、経営に対するインパクト(負担)は、金利の上下1%とその差が引き起こしているコスト高では桁が違います。

適正な金利を負担して、人件費を払い、利益を出し、税金を払うというまっとうな商売ができる環境を整備するのが、政府のまっとうな経済政策であり、日銀のまっとうな金融政策であると思いますし、その実行を期待します。中小企業のコストが上がるたびにパッチワークのようにその部分に対する支援を繰り返すだけの対処療法ではなく、企業が自らの根っこを強く太くできる環境づくりを期待したいものです。

その環境の中でどう行動するか、どう努力するかは、自分たちしだいです。まさに自己責任の世界です。この国の経済に責任を持つ為政者に対して、結果を保証しろとは言いません。ただ、頑張れる環境とチャンスを作って欲しいと切に願います。
 
日銀の異次元緩和によって、世の中に出回るはずの全体のお金の量は増え続けています。お金がジャブジャブだと言われますが、私たち中小企業の現場では全くその実感はありません。お金は蒸発しません。どこかに滞留、渋滞して、あるいは、海外に流出して、必要なところに廻っていないということでしょう。地域で廻るお金を増やし、そのスピードを上げることが重要だと申し上げているゆえんです。

その中でエネルギーは誰にとってもなくてはならないものだけに、そのインパクトは大きいです。省エネを進め、地域で再生可能エネルギーの地産地消を進めることで自社から、また、地域から漏れ出すお金を減らすことが有効です。
 
「経済」とはそもそも「経世済民」。「世を治め、民を救う」ための仕組み・道具であるはずです。金とモノとの交換とその周辺の活動と投機のようなマネーゲームだけを捉えた狭い意味の経済がはびこっています。その結果、貧富の差が拡大し、貧困が広がり、それが社会の分断を招いています。経済とは決して単なる金儲けの話ではないはずです。

私たち地域の中小企業は、地域の暮らしの血流である経済を下支えする存在です。日々の経済活動になりわいとして携わっている者だからこそ、本当の経済の役割を知り、誇りを持って、経済活動の中での自分の役割を果たしていくべきだと思います。一部の上場会社の株価の動きに一喜一憂する世界とは一線を画し、根っこの強い中小企業をつくること、そのことで持続可能な地域社会を創っていくことが、中小企業経営の醍醐味ではないでしょうか。