「この国のエネルギーの実態を最終的にどういう形で消費されているかという視点で観ると、直接的な電力は26%で、残り70%以上が化石燃料を用いた熱利用です。また、その際に、全体として投入されたエネルギー資源(一次エネルギーと呼びます)の6割以上が最終的に熱として廃棄されています。」(日本学術会議HPから)

ですから、無駄にされている部分も含めた「熱」に目を向けないとエネルギーの全体像は見えないはずです。
 
この国は、エネルギー源として使える天然資源、特に化石燃料には恵まれてはいませんが、熱に目を向けると、使っていないエネルギーがたくさんあることに気がつきます。太陽光ももちろん発電もできますが、膨大な熱エネルギーです。(簡単に湯は沸きます)。木質バイオマスも発電ができますが、その際に発生する熱は大部分無駄になっています。さらには発電しなくともボイラーで熱を得ることができます。熱に目を向けると、世界の中でも希有なくらいに緑と水に恵まれたこの国は決して資源のない国ではありません。ただ、資源を資源として見ていないだけではないかと思うのです。
 
そして、省エネです。大企業は専門の部署があり専門知識のある専任の担当者がいますので、また、ESGやRE100といった経営上(取引上)の要請もあり、相当に進んでいるのに対して、わが中小企業の現場がなかなか追いついていないのが実態でないでしょうか。

逆に観れば、まだまだ大きな可能性があります。いわば「タオルがジャブジャブ状態」です。 エネルギーコストの暴騰の中で経営的にメリットがあります。気候変動に対しても自社でできる取り組みです。中小企業がやらない理由は見当たりません。省エネは特別なあるいは最先端の技術を待たなくとも、多額のお金をかけなくともできることは数多くあります。ぜひ、エネルギー何でも相談所にご相談ください。
 
エネルギー基本計画の所管ある資源エネルギー庁は、その基本となる考え方は「S+3E」であると言っています。安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時達成することだと。それは間違っていないと思いますが、重要なことはその際にどういうスタンスで考えているかを認識することだと思います。これまでの議論はどうも「今だけ、ここだけ、自分だけ」に偏ってはいないか懸念されます。

知らぬ間に国民的な議論も経ずに復活しようとしている原子力による発電はその最たるものです。未来永劫の課題である使用済み核燃料や廃炉の問題に正面から向き合わず先送りし、利権を持つ一部のステークホルダーが既存のビジネス構造を変えることを避け、安全対策と称して、最終的には国民負担になる膨大なお金を投じて・・・と。
 
これからデジタル社会は今まで以上の膨大な電力が必要だと言われています。なら、なおさらのこと、エネルギーの無駄を減らすことが必須です。その上で、熱を含めたエネルギー源の利活用に真面目に取り組むべきだと強く思います。真のS+3Eを実現するために、お金と技術の投入先を見直して欲しいのです。将来的にモノになるかどうか分からない新技術に挑戦することを否定するつもりは全くありませんが、今ある使える技術でできること、やっていないことがありすぎると言いたいのです。
 
エネルギーの基本計画の検討、策定は、次の3ステップで進めるべきではないかと思います。
 

1.まず、現状のエネルギーの(熱や動力といった電力以外も含めた)全体像を正確に把握、認識し、
2.省エネを実施することでどれだけエネルギーの使用を減らせるかを検証し、
3.そして、必要なエネルギーをどう調達するかを考える

 
エネ経会議では、ある地域をモデルに地域版エネルギー基本計画の策定に取り組んでいこうと準備しています。進捗を報告してまいります。併せて、国のエネルギー基本計画を注視していきましょう。