さて、最近の政府やエネルギー業界からの発信では化石燃料や原発から再生可能エネルギーに急に移行することは「現実的ではない」という意見が目立ちます。しかし、よく考えてみましょう。言うまでもなく気候変動への対応は待ったなしですし、化石燃料の輸入代金は海外へ漏れ出し、原発のような中央集権的なエネルギーは地域からお金を吸い上げ、不安定な国際情勢に左右されるエネルギーは経営コストを押し上げ・・・と中小企業を巡る経営環境にとっては極めて「現実的」な問題になっています。さらには、未解決の原発の使用済み核燃料の問題は極めて「現実的」な問題です。この国エネルギー政策の舵を大きく切ることなく、いわゆる「現実的」な対処方法に拘泥していることこそ、「非現実的」なことなのではと思います。

現実的なアプローチとしては、地域単位においても企業単位においても、

  • どのエネルギーをどこでどの位使っているのかという現状を把握し、
  • それをどれだけ減らせるか=省エネを明確にし、
  • 1.マイナス2.のその引き算で必要なエネルギーを算出し、それをどう賄うかの計画を策定し、

実行するということだと思います。
 
これから政府はGXで150兆円の官民投資を目指し、その呼び水として20兆円を拠出すると言っています。新しい技術開発に資金を投入することを否定するものではありませんが、同時に今ある技術を最大限に活用し、確実な効果、成果を上げることを優先させるべきだと思います。そのためには上記の1.2.につながる中小企業の省エネ診断を推進するために、省エネ診断の義務化とそのための経費を支給することを検討して欲しいと思います。先月のこのコラムで書いたように例えば、住宅の断熱のように今ある技術でできる省エネ策はたくさんあります。現実を上から下から横から斜めからと多面的に観ていくことが必要で、私たちはその姿勢を「現実的」と呼びたいと思います。