新規就農者は毎年約5万人がいる。49歳以下は約2万人

ここ10年で農業を仕事にした人は毎年約5万人。このうち49歳以下の若い人達は、毎年2万人近くが新規に農業の仕事に就いています。

農業法人協会ホームページより

この背景には新規就農支援や相談を行う「全国新規就農相談センター」(一般社団法人全国農業会議所)、農業法人の集まり「公益社団法人日本農業法人協会」を始め、各自治体の相談窓口、国の支援事業や受け入れが充実しててきていることがあげられます。また国が支援するインターシップ制度があり、2日間から6週間、希望の農家に行って無料体験ができます。
また多くの農家が法人化し、農業経営の基盤を作り、若い人の農業での独立支援や就職としての受け入れ体制を作ってきています。法人では、企業化しレストラン、商品開発、通販部門、体験教室、宿泊施設などもあり、企業の就職という形の新規就農があり、毎年の49歳以下の新規就農のうち、約7000人が農業法人の企業に就職という形なのです。

農家民泊で観光客を迎える形の農業も増えています。国も支援しています。EUでは若者に支持されている農村の新たなスタイルになって定着しています。

農業経営体のうち、2020年の個人経営体は103万7千経営体で、5年前に比べ30万3千経営体(22.6%)減少していますが、法人経営体は3万8千経営体で1千経営体(2.8%)増加しています(2020年農林業センサス)。
東京から地方への移住に関心がある20代は43%
 
東京・有楽町の「ふるさと回帰支援センター」では、45道府県の移住相談窓口があり、。2021年の地方移住相談は約5万件と過去最高にのぼっています。
 
総務省地域力創造グループ「地方移住への関心」(東京圏在住者・令和3年11月内閣府より)を見ると、移住希望は20代で強い傾向にあり、東京圏から44.9%、23区からは49・1%もあります。
農家が観光の拠点となる
長崎県大村市の直売所「おおむら夢ファームシュシュ」。60坪の直売所と農家レストランと体験を組み合わせ、売り上げ7億円。農家宿泊10軒。観光客49万人がきています。こういった仕組みは、ヨーロッパでは一般的です。宿泊もまるごと1棟を貸すというものです。1棟貸しのゲストハウスがたくさんあります。
注目は和歌山県田辺市「たなべ未来創造塾」産官学金融連携で若者の起業支援

若い人の起業・事業支援で注目されているのが2016年に開校した和歌山県田辺市「たなべ未来創造塾」。市・大学・金融機関・事業者などが連携し、塾の参加は20代から40代までの12名の少数精鋭主義。講座は14回で半年間、受講料は1万円。2023年で7期を迎え80名が卒業し、4期で36名が起業。起業せずとも新たな事業や塾生同士の仕事も生まれています。市の担当が面接し多彩なメンバーを人選し、商業、農業、林業、料理人、工務店、飲食店、デザイナー、行政書士など異業種連携で仕事が生まれように配慮されています。塾生は、公募、商工会、金融機関などの推薦によるもので、日本政策金融公庫は、塾生に事業計画、信金融資、ファンド投資などを平行してアドバイスします。融資もされ計画がビジネスになるものがいくつも生まれています。

日本政策金融公庫は、塾生に事業計画、信金融資、ファンド投資などを平行してアドバイス。融資もされ計画がビジネスになるものがいくつも生まれている。
 
実践家も講師で呼ばれ、事業作りのヒントに繋がり、また連携もできる形をとっています。
市を取り巻く環境、人口の推移、高齢化、人口減、空き家率、若者の流失、産業構造など具体的数字を出して、塾生に現状を認識してから、どこにビジネスチャンスがあるのかを討議し、講義の後半は塾生自ら事業プランを練りお互いが討議し修了式のときに関係者の前でプレゼンテーションを行います。卒業生との交流もおこなわれ地域内で新たな連携をし活動が広がる形になっているのです。

地元の新聞、ミニコミ、WEB、東京のメデァアも呼び掛け取り組みが取り上げられて地域や県外でも広く知られていくようになっています。 塾は富山大学でスタート。当時の担当・金岡省吾教授のアドバイスを受け、市・大学・金融機関が協定書を結び始まりました。その活動に注目した田辺市が塾のノウハウ移転を依頼し、市の鍋屋安則さんが富山大学で金岡教授のもとで学び田辺市で形にしました。その後、金岡省吾教授は熊本大学に移籍。2021年からは、田辺市と熊本大学と熊本の自治体が連携しています。

資源のリサイクル・再生可能エネルギー・農業活動・教育ファームの運営で注目の 埼玉県入間郡三芳町「石坂産業」①

活力ある地域の共通点

いずれも共通していることは、
①地域のもてるものを徹底して集約をして方向を明確にしている
②人材教育に力を入れていて若い人を育てている
③ものづくりに時間と労力をそそいでいる。その結果商品力がある
④外部に視察でかけ貪欲に外部ノウハウを吸収している
⑤外部との接点で対外的に売れる新たなチャンネルを作っている
⑥消費者の接点を創りなにが求められるか把握しポイントを絞って商品開発をしている
⑦海外にも営業をかけて、ノウハウを貪欲にいれている
⑧海外客誘致を考え英語サイトを作っている   

などがあげられます。

資源のリサイクル・再生可能エネルギー・農業活動・教育ファームの運営で注目の 埼玉県入間郡三芳町「石坂産業」②

活力あるところは、これまでの農業、観光、商品と全体でとらえて、お客さんが喜んで食べてもらえる、来て泊まって楽しめる、見て安らぐ、など、総合的に考え、形にしています。
 
さらに一歩進んで、今、力をもっているところは、次の要素まで踏み込み始めています。

①IT、インターネット、POSシステムを利用して、顧客管理、商品管理を実施して、売れ筋の把握や販売態勢の確立を行っている。それによって通販も伸ばしている
②デザイン、それもトータルに考えて、専任でデザイナーを雇っている
③全体の店舗やデザインや景観に配慮をしている、自動販売機を一切置かない、あるいは景観を配慮して目隠しをするというったところもある
④環境を考えリサイクル、リユース、太陽光、有機農業など、持続社会に必要な要素を取り入れ始めている
⑤料理メニューや体験プログラムの開発を行い、地域側が、消費者に提案をして、食べ方や学びの場などを創造している

などがあげられるでしょう。