翻って、国際情勢に翻弄され、エネルギーコストが暴騰し、中小企業の経営にも大きな影響を及している国のエネルギー政策は、議論をこねくり回して、その末、決断せず、結論を先送りしているように見えて仕方がありません。よりよい新しい時代を創るために、これまでの慣例を変えるという決断をする勇気がないままに。
 
地域の活性化というお題目とは裏腹に、全国各地の新電力という動きがありながら、それを支援するどころか、電力需給と市場の仕組みの不備を看過し、大手主導の体制を改革しない国の姿勢しかり、地域との共存共栄と言いながら、一緒にやるより独占したいという姿勢を変えない大手電力会社の経営姿勢しかり。 
 
大手電力会社(敢えて社名は申し上げませんが、各社のWEBサイトを開けばどなたでも見ることができます)の直近の財務諸表のバランスシート(貸借対照表)を見ていたら、面白い(面白いと言うのは不適切ですが)発見をしました。 バランスシートの左側の資産の部を見ていくと固定資産に原発関連施設があります。興味深いのは、その下をずっと下がって見ていくと「加工中等核燃料」という項目があります。加工中とは?実際には使用済核燃料のことだそうです。核燃料は夢の燃料で何度も使えるという架空のストーリーに副っているから、(使えないゴミではないので、「負債」ではなく)「資産」なのだそうです。しかし、実際には使い始めて40年、ずっと「もんじゅ」等で研究試験を繰り返してきたが、成功せず、今となっては再処理しての再利用は不可能だということが事実上分かっているのにも拘わらずです。

なぜ、原発を止められないかと言えば、その大きな理由のひとつは 大手電力会社とそれを支える金融機関の財務的経営問題という側面が大きいのではないかと推察しています。もし原発を使わないと決めてしまうと原発施設と使用済核燃料という資産を帳簿から落とさなくてならなくなり、電力会社の財務が大きく棄損してしまいます。電力会社によっては、債務超過の恐れもあります。そうなると困るのは、原発に膨大な資金を貸し付けている政府系も含めた金融機関です。さらには、そのシステムを支えることで存在価値を高めてきた省庁とそのシステム全体から支援を受けている一部の政治家と見るのは穿ち過ぎでしょうか。
(財務的な問題なら財務的な処理で解決する方法はあると思います。それには政治的な決断が必要ですが)
自然災害やテロに対する安全性と併せて、次代にツケを廻すことになる使用済核燃料の処理についても目をそらすべきではないと思います。
 
それぞれがそれぞれの立場で互いに忖度しながら、当面の落としどころを探しているというのが実態なのではないでしょうか。ですから、結果として石橋を壊してしまい、持続可能な未来という対岸に渡ることができないというのがこの国の現状でしょう。

原発に限らず、エネルギー政策全般について、ポジショントークや忖度を脱した、明確かつシンプル、論理的かつ合理的な判断と決断が待たれます。