もう一つ感じたことは、相変わらずの大渋滞です。例えば、ロスアンジェルス空港からダウンタウンへは空いている時間帯なら30分もあれば行けますが、朝晩のラッシュアワーには、イライラしながら2時間以上かかることもあるそうです。 テレワーク、リモートワークの普及で、時間と場所に制約を受けない働き方が日本以上に進んでいるアメリカでも、リアルな移動は未だ不便です。
EVという新しい道具の普及と同時にその道具をどう使うかの両面で考えるべきで、いくら最先端の道具を導入してもその使い方が従来と変わらなければ、成果は少ない。つまり、EVというそれ自体は脱炭素に効果的でも、各自が一台づつ車を運転して移動しているという暮らし方、ライフスタイルを変えない限り、(便利さを手放すことなく)本当に心豊かな暮らしを実現できないということではないでしょうか。EVは部分最適の解だとしても、環境負荷が少ないという触れ込みで車の数が増えてしまえば、必ずしも全体最適につながらないということです。
EVだけに限らないことですが、先端技術の開発に注力することの重要性と、それだけでなく、その技術を使うヒトの意識と行動変容が重要だと改めて思いました。
さて、国内の私たちの日々の現場に目を移せば、円安やロシアによるウクライナ侵略などの不安定な国際情勢が引き起こしているエネルギーコストの急激な上昇は、程度の差はあれども業種業態を問わず中小企業の経営に大きな負担となっています。今後も元の水準に戻るかは疑問です。会員の皆さまもさぞお困りではないでしょうか? 対応は具体的にはどうなさっていますか?
エネルギーに関しては2つの要素でとらえるべきだと思っております。
1.まず考え、実践すべきことは、無駄なエネルギーを使わない=効率的にエネルギーを使う=省エネです。
2.その上で、必要なエネルギーの種類と量をどう賄うかを考えることです。
コスト的にも、地球環境的にも、一番いいのは「使うエネルギーを減らす」ことです。現状をそのままにして、例えば、いきなり太陽光発電を考えるというのではなく、現状の設備、施設、運用のどこに無駄があるかを論理的、専門的、科学的な視点で調べて、その対策を打つことから始めましょう。その際に大切な視点はエネルギーが電力だけではないということです。最終的なエネルギー消費を見てみると、電力が占める割合は3割程度で、その他は動力、熱(冷・温)です。ですから、エネルギーのことを考える際には電気のことだけでは片手落ちということになります。例えば、事務所の窓ガラスが古いもので室内の熱が漏れていたり、逆に外の陽射しや冷気が部屋に入ってきていないか? ボイラーを使っている工場では、ボイラーの熱に無駄がないかという観点でボイラーの配管のパイプの断熱が充分か?を調べます。チェックすべきことはたくさんあります。改善策には満塁ホームランはありません。細かいことの組み合わせであり積み重ねです。
エネ経会議では、私が会頭を務める小田原箱根商工会議所と連携し、商工会議所が済産業省の中小企業向けの省エネ推進の補助事業である「省エネお助け隊」小田原箱根商工会議所| 相談窓口一覧 | 省エネお助け隊ポータル ~ 中小企業の省エネ推進 ~ (shoene-portal.jp)として補助事業者としての認定を受け、会議所の会員さんの省エネ診断からその結果を踏まえた上での改善策の実行(補助金申請など)のお手伝いもしています。省エネ診断をして、どこの無駄があるのかを見える化した上で、その無駄を排除していきます。
省エネをしっかりした上で、必要な電力も含めたエネルギーをどう賄っていくのかを考えましょう。その際に重要なことは再生可能エネルギーをどう増やしていくのか?それをどう地産地消でやっていくのか?です。
それぞれの地域で皆さんが毎年支払っている電力料金は大きく、そのお金は残念ながら地域に戻ってきません。一部の大企業の内部留保として貯えられ、あるいは、一部は海外から輸入する年20兆円を超える化石燃料の輸入代金として海外へ流出しています。私たちが毎年既に支払っているそのお金は少しでも地域で廻し、地域の課題の解決に使うべきでしょう。
さらにエネルギーコスト、特に電力料金が高騰している今こそ、皮肉にも投資のチャンスでもあります。例えば、省エネのために古い冷蔵庫を入れ替えたり、創エネで太陽光発電を導入したりといったエネルギー関係の投資は高い電力料金との見合いで回収が以前よりずっと短い年数でできるようになってきました。
地球規模で気候変動が激化する中、人類共通の課題である脱炭素にとっても、地域経済にとっても、自社の経営にとっても「省エネ」と「再生可能エネルギーの地産地消(創エネ)」は重要です。部分最適と全体最適をしっかりと見極めながら進めていくことが肝要です。
いずれにしても、まずは直近の経営コストを抑え収支を改善するための方策が必要です。全国各地で私の地元と同じような体制が作れないかと模索しています。ご興味のある方はぜひ、一度お声がけください。ご一緒に考えましょう。
追申
私の知り合いの若者(大卒で20台男性)はロスアンジェルス生まれ育ちでロスの名門大学を出てロスに本社がある会社(AI、ARといった最新のテクノロジーを使って様々な企業の支援をする)に勤めていますが、実際に住んで働いているのはハワイ!です。本社にはほとんど行かないそうです。彼の仕事は半分営業で半分開発。営業は世界中の顧客をリアルとリモートで訪問したり、トレードショーに出展したり本社にいてはできないことが多い。また、開発は全てオンラインでできるので、本社に出社する必要がなく、会社もそれを要求しないのだそうです。求められる結果さえ出せばですが。
ですから、彼は勤務時間の枠に囚われることなく自分のペースで仕事し、午後2時にはセミプロ級のサーフィンに嵩じる日々だそうです。会社の業績が落ちれば即レイオフするアメリカならではかもしれませんが、彼の働き方がうらやましいと思う日本の若者も多いかもしれません。優秀な人財ほど国境を越えて職を選べる時代に、日本だけのスタンダードで考えていると優秀な人財を採用することが難しい時代に入っていると実感する話でした。
ヒトも含めたソフトには国境がなくなりつつある中で、日本だけが独特だという固定観念に囚われることなく、視野を広げ、意識と行動を変えていくことが、この国が本来の力を発揮し世界の持続可能な平和の暮らしの実現に貢献できる道なのではないかと、太平洋の反対側に居て思います。