過去50年間この国の市中に出回っているお金(マネーストック)は順調に増え続けています。特に2015年からはマネタリーベースでの伸びが顕著です。これはいわゆるアベノミクスでの3本の矢のうちの「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」によって、大量のお金が市中に出回ったせいです。「お金がじゃぶじゃぶ」と言われる所以です。しかし、それを商売の現場では全く感じることはないというのが私たち中小企業の経営者の実感ではないでしょうか。

問題はその間のGDPの推移です。世の中のお金は増えているのに、名目GDPはこの30年間ほとんど増えていません。つまり、投入されている資金が全く新たな価値を生んでいないということになります。株価が上がり、海外への投資が順調なのは、実態の経済とはかけ離れたところで、行き場のないお金がそこへ流れているということではないかと思うのです。つまりお金が廻っていないということです。ですから、いくらお金を刷っても、そのお金は偏在し、あるいは海外へ流れ、地域の中小企業へは届かないので地域経済はよくなりません。 地域に入ってくるお金を増やし、地域でお金を廻し、そのスピードを上げていくことが大事です!と終始一貫申し上げている所以です。

地元で賄えるものは地元産を買うこと、できるだけ地元の業者に発注することも有効でしょう。外からお金を呼び込む「観光」も有効でしょう。その中で、これまであまり意識されていなかったのが、エネルギー支出です。

その昔はもともと山から薪や炭という形で調達していたエネルギーが、石炭になり、ガスになり、石油になり、天然ガスになり…と今ではほとんど域外、国外から買うものになりました。そして現金収入の乏しい地域は貧しくなって…ということが日本中で起こったわけです。もちろん、江戸時代の暮らしに戻ることはできません。そこで必要なのはテクノロジーという智惠と発想の転換です。利便性を犠牲にせず使うエネルギーを減らし=省エネ、手元足元のエネルギー源を使う=エネルギーの地産地消を強力に推進すべき時です。

脱炭素の掛け声のもと、これから「じゃぶじゃぶ」に出てくるであろう国の補助金や交付金を上手に使うしたたかさも必要でしょう。
そのためには、まず自分の地域ではエネルギーをどう賄っていくのかを表すエネルギーの関する地方版の基本計画を官民で協力して策定すること。進捗と外部環境の変化に合わせてPDCAを廻していくことかと思います。まずは自分の地域の、電気だけでなく熱や動力も含めたエネルギーの全体像の現状を把握した上で、将来のなりたい姿を省エネと創エネで作っていく工程表が必要です。これまでのように「エネルギーのことは国が考えて決めることなので、地域はそれに従うだけ…」という他人任せではいけないと思うのです。

エネ経会議としてどのようにそのお手伝いをできるかを検討しております。まずは、いくつかのモデル地域で始めてみたいと思っています。