中井氏はビデオメッセージの中で「世界全体が脱炭素に動き出している」と語り、自然資本と循環経済の国際的なうねりの中で「脱炭素は成長分野かつ地域活性化にもつながるもので、現内閣でも重点施策と位置付けています。政策を総動員して脱炭素を急速に推進する所存です。その実現に向け、関係省庁が一丸となり、皆様はじめ各業界と連携し、国民の理解と協力を得て消費行動変容を促進することが大変重要です。我々は地域や暮らしに着目し、現実的に持続可能で活力のある経済社会を作る政策を続けます。同時に、市場を成長に繋げるための施策を、覚悟を持って皆様と続けまいりたく思います」と語った。
 
末吉氏はJCI参加企業が約700に達したことを報告し、JCI立ち上げの動機を「日本政府の気候変動に対する取り組みの遅れに危機感を抱いた。何故ならば世界でビジネスを行う日本企業が、気候変動に取り組まない日本はアンフェアであるとのそしりにより不利を被ることになる」とし、企業文化が政府にも物を言うように変革していくべきと述べた。

さらに「世界気象機関(WMO)から向こう5年間に平均気温1.5℃上昇確率が50%とのレポートが出た。我々に残された時間はどんどん少なくなっている」との危機感を示された。最後に「エネルギー危機の中でも気候変動対策の強化を求める」JCIメッセージへの賛同をよびかけに触れ、日本のエネルギー政策が道を誤らぬよう政策と世論をリードしていくのがJCIです。一つでも多くの賛同の声を積み上げ、JCIが担う役割を果たしたいと結ばれた。
 
豊岡氏は自身が関わる、東急リゾーツ&ステイ一般社団法人徳島地域エネルギーグリーン アースリコーによる未利用バイオマス資源の熱利用プロジェクト「千葉もりぐらしコンソーシアム」の取組を紹介。地域の資源を地域で有効に活用して、地域経済を循環させることもSDGsの実践であると語った。
 
その後、衆議院議員の河野太郎氏による基調講演「日本のエネルギーの課題と展望」が行われた(※ビデオ講演)。
河野氏は「エネ経の皆様には色々な活動をしていただいて、日本がカーボンニュートラルに向けて進んでいく後押しをしてくださっています。これまでも力強くやっていただきました」とエネ経会議の会員への言葉を語り、「現在、ウクライナやロシアの情勢やコロナ禍などといった想定外のことが起きていますが、目指すゴールはぶれずに対応することが大切です。菅前総理の元、2050年までにカーボンニュートラルをという宣言が出て、日本も世界とめざすゴールを共有し、会議のテーブルに着くことが出来たと思っています。そこで菅総理が作ったこのモメンタムを殺してしまってはならないと思っております。私は皆様と頑張っていかないと、また日本だけ少し後ろに下がることになりかねないと心配しています。ここは踏ん張りどころと思って皆様と頑張っていきたいと思っています」と語った。
 
そして、昨年度の3月22日を例に、「その日は電力がひっ迫したことで日本中が大騒ぎとなりましたが、実は1月の電力消費量の方が多いのです。ではなぜ足りないと話題になったのかというと、夏の消費量を想定した発電所の点検のために少し停止していたためです。電力が足りないから増やすではなく、電力の消費を減らすことを考えるなどしてゴールをぶらさないことが大切です」とし、規制改革担当大臣当時に断熱材の必要性を訴えた自身の体験も語りながら語気を強めた。
 
最後に小水力や波力や洋上風力発電など地域の取組に触れながら、講演のテーマにある「期待していること」として、「皆様には再生エネルギーに対して技術開発やそのための試験などをして、どこかと組んでビジネスを立ち上げるなどといった、皆様からの能動的なアイデアが出てくると期待しています。大企業だけがやるものではなく、色々な規模の会社がアイデアを競ってビジネス展開できるのが再生エネルギーのいいところなので、2050年にこだわらずカーボンニュートラルを1年でも2年でも早く達成できるよう皆様のアイデアや活動に期待しています」と締めくくった。
 
全員大会後半では、フォーラム「脱炭素時代の地域経済循環とエネルギー」が開催され、一社)ローカルグッド創成支援機構 事務局長 稲垣憲治氏が登壇し、「ゼロカーボンシティを地域の稼ぎと地域発展につなげるために」と題し講演した。
稲垣氏は文部科学省や東京都庁を経て、地域新電力支援や環境・まちづくり事業支援に取り組む中で、脱炭素において地域の役割が重要になっていると語った。さらに、他者に任せるだけでは地域は活性化せず、全国696自治体が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明している現在、盛り上がるゼロカーボンシティのうねりを地域発展に繋げるためにも「地域の担い手」の重要性をあげ、それが地域経済循環や地域脱炭素へ繋がるとした。
地域発展につながる再エネ開発についても、地域のニーズを把握している地域の担い手が地域で再エネ開発を行うことで、地域共生や地域経済循環に繋がるとし、そのためには地域内外の企業等との連携により地域人材がノウハウを蓄積する重要性を説いた。
続いて行われた会員企業からの事例報告では、それぞれの地域で活躍する小田原箱根エネルギーコンソーシアム(ECHO)活動を 湘南電力社長 原正樹氏、中国ウインドパワーグループ活動を中国ウィンドパワー株式会社 代表取締役 矢口伸二氏から報告が行われた。
 
原氏は「分散型のサステナブル社会をめざして~地域エネルギープラットフォーム構築への取組~」と題し、地域の公益事業者が集合したエネルギー主体の街づくり事業に取り組む自身たちが、地産地消型の再エネ電力を市内の私立幼稚園・小中学校42施設で採用されていることなどから、電気代を地域循環させることで地域活性化する仕組みの創出をめざしていると報告し、エネルギーをツールとした持続可能なまちづくりを目指していると述べた。
矢口氏からは自身のWPグループ(中国ウィンドパワー・益田ウィンドパワー・江津ウィンドパワー・TiiDA、神楽電力)の事業から、地域のエネルギーを手段として、人口減少や財政逼迫、自然災害、環境悪化などの課題を抱える地域に対して貢献していきたいとし、その取組が報告された。具体的な貢献事例として、地域での清掃活動を行うことで地域との信頼関係を構築しながら地域教育機関へのエネルギーについての出前講習や見学の受け入れ、エネルギー支援を通しての駅前活性事業支援や地域の集会所や空き家活用のサポートなどを紹介、エネルギーを地域で作り、販売する中で地域雇用にも繋げるなど、地元のエネルギー資源が地元地域を活性化させるとした。
 

会場全景―参加者からの質問に答える登壇者たち

最後に本日の登壇者(稲垣氏、原氏、矢口氏)と鈴木代表によるパネル討議が行われた。
 
討議中、「地域の課題解決のためにどうエネルギーを使っていくべきか」と鈴木代表から意見を求め、稲垣氏は再エネの必要性が挙げられ、原氏も「自分も同感。地域で新電力に取り組んでいるが、再エネは環境的価値があると同時に、我々地域の者が地域で販売するため、我々の想いも地域に届く。地域活性の土台になりうる」と語った。矢口氏は「経済活性化と人口減少は私が暮らす島根県浜田市に限らない課題。所得を上げることが地域の課題でもある。そのためにも我々は地域で大きな仕事を産み出そうと考えている」と述べた。
 
また、4月に発表された脱炭素先行地域決定(26地域)の話題にも触れ、稲垣氏からは「地域側だけの取組には限界がある。行政が関わる申請には行政と地域が共同提案することも必要。行政に理解ある担当者がいるようであれば地域側もどんどん連携していくと良いだろう」と語られた。
討議の質疑応答では参加者から登壇者に質問が挙がり、闊達な意見交換が行われたほか、大会終了後の懇親会でも互いの取組の参考意見を取り交わされ、本年の社員総会・会員大会は盛会の内に終了した。