1972年のオイルショックの後、1973年頃からエネルギーの効率改善が急速に進みます。
 
そして1992年に開かれたブラジル・リオデジャネイロでの「地球サミット」(国連環境開発会議)では、温暖化や森林破壊などの環境問題にどう対処するか話し合われました。その後、1997年の世界各国の政府代表者が日本の京都に集まり、第3回目となる国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3:Conference of Parties)を開催しました。この会議において採択された国際条約「京都議定書」で、CO2削減がうたわれます。 
 
地球温暖化の原因がCO2であると判明し、「温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること」として、ここで初めて世界として新しいエネルギーでCO2を出さない方向へ世界が動き出します。
 

その後2011年の東日本大震災で原子力発電所の事故により、「エネルギーは安全であるべし」「エネルギー消費をセーブすべし」という機運が生まれ、省エネ・安全エネルギー・安価エネルギーへの意識が高まりました。

京都議定書は2020年までの温暖化対策の目標を定めたものですので、パリ協定はそれをバトンタッチする形で2020年以降の目標を定めています。
省エネルギーをはじめ、新エネルギー、再生可能エネルギーという言葉を最近聞くようになりましたが、これらの違いは?

片野:最近よく耳にされる「新エネルギー」とは、自然エネルギーと一致しておりますが、正確には「補助金が出るエネルギー」を指します。国として補助金を与える対象のエネルギーで、図にもありますが、以下の10種類となります。
①バイオマス(動植物に由来する有機物)を原材料とする燃料製造
②バイオマス(動植物に由来する有機物)熱利用
③太陽熱利用
④河川水などを熱源とする温度差熱利用
⑤雪氷熱利用
⑥バイオマス(動植物に由来する有機物)発電
⑦地熱発電(バイナリー発電)
⑧風力発電
⑨水力発電(出力1,000kW以下)
⑩太陽光発電 
 

そして、再生可能エネルギーとは、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーのことです。その大きな特徴は、「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2を排出しない(増加させない)」です。日本の電力はまだ8割が化石エネルギーです。
省エネというのはエネルギーの効率を意味します。エネルギー全体を効率的に変えるもの、とご理解いただけたらと思います。この際に使われる言葉として効率(省エネ・エネルギー効率・エネルギー生産性)、ゲームの流れを変えるもの、もったいない、スマートグリッドなどがありますが、特に日本から出た言葉が「もったいない」です。現在では「MOTTAINAI」として省エネ用語として世界で定着しております。そう考えますと、日本は当初から省エネ精神がある国ですね。
 
この省エネと比例してCO2を46%減らそうという動きがありました。図からも経済成長は省エネに比例して成長していることが分かります。CO2を減らし、化石燃料を減らし、温暖化を減らし、効率を改善する。エネルギーとして新エネルギーが現在では日本のみならず世界で主流です。特にドイツやデンマークは先進的です。
片野:では日本ではどう取り組んだかというと、図をみてください。政府はkwh(1時間に使う電力)を減らすために省エネの実践を推進中です。我々エネ経会議が取り組んでいる地域PF事業もこの流れの中にあります。省エネとはエネルギーの分母を減らすことに貢献することです。
ちなみにkwhに対しキロワットという単位もありますが、こちらは電気が出る容量を指します。風力発電が1000kwの電力とすると、1000kwの発電機を積んでいるというわけです。しかし風力の場合は風が吹かないと電気はできませんので、1000kwの能力があっても実際にできる電力は四分の一ほどと効率が悪いのです。
 
太陽光も同様で、日が出ないと電気ができないため効率が悪いです。一方で、天然ガスや原子力、火力は自然に左右されないため効率が良いです。この中でも天然ガスは化石燃料の中でもCO2が少ないです。
現在のウクライナでのロシアによる戦争でも、化石燃料のことが話題になりましたが、2050年頃にはガソリンスタンド無し・石油無しの時代になると、その方向に世界は向っています。
-経済産業省はじめ環境省と資源エネルギー庁、時に国土交通省などで補助金がありますが、その違いは。

鈴木:国の補助金についてですが、まずエネルギー全般を統括しているのは経産省になります。その中で環境をテーマにCO2削減に取り組む環境省の補助金がありますので経産省と環境省は長男・次男の関係に例えられます。海外では環境省的なセクションでエネルギー対策を行っており、その流れを日本の環境省も受けていてグリーンリカバリーなどCO2削減に動いております。
 
一方、国土交通省(旧建設省)は交通・建物の部分から断熱などの目線で省エネに取り組んでおります。住宅の断熱化を推進し、太陽光発電と組み合わせて住宅におけるエネルギーの削減を目指すZEH(ゼッチ)=ゼロエネルギーハウスの概念は日本では国土交通省の扱いとなります。
-なぜエネ経会議が補助金利用の支援をするのか?
鈴木:その前に私たちエネ経会議の活動についてご説明しますと、私たち自体は自治体と絡んでの活動がメインというわけではなく、補助金の内容次第で自治体と連携を取ることはあります。例えば小田原箱根エネルギーコンソーシアム(ECHO)などです。ただし大きい案件の場合は自治体と取り組むことが多いかと思います。
 
エネ経が補助金支援の際に想定する層や、補助金の種類についてお教えください。
 鈴木:補助金制度に興味はあるものの自社には縁遠いと諦めておられる経営者をサポートしようという意図です。
補助金について、何を選べばいいのか悩まれる経営者さんも実は多いのです。大企業の場合は省エネ法で目標が義務付けられているため専用部署がある企業もあり、目指す方向性が明確です。一方、中小企業は義務付けられていない分不明瞭です。また、大企業のように専用部署があるところは専門の人材も在籍しており、自発的に目標に向かって動いていますので、私どもは補助金の最新情報をお届けするお手伝いほどでお互いことがたります。ですが中小企業の経営者さんの多くは、省エネについて意識があってもそもそもご自身の事業が忙しく、自分から目標にむけた補助金を探す時間すら取れない場合が多いのです。更に、何を選ぶか以前に痔補助金自体を知らなかったり、自身の企業の現状把握もままならない状況の方もおられます。だからこそ私たちが診断を行う意義があるのです。皆様の現状を診断し、各位のエネルギー通信簿を作成し、その診断結果から目指す目標を設定をし、どの補助金が向いているかなど一緒に考えていくことができます。そして結果的にそれが補助金の採択に役立つのです。
 
鈴木:省エネ診断は企業の健康診断のようなものです。減らすところを減らすために必要な運用改善や設備導入の助言を行います。このために必要となる費用を補助金で検討することを提案し、どの補助金が適しているかアドバイスを行います。そして申請という場合にはご自身で申請書類を作れない場合は我々が作製のお手伝いをし、それで補助金が採択されれば、使うエネルギーが減るという成果になるわけです。
代表的補助金の特徴と応募に際しての注意点
鈴木:資源エネルギー庁の先進的エネルギー投資が代表的です。年間2500件ほどの申請を受けている補助金で、省エネ型設備更新が特徴です。つまり「古い設備を新しくするリニューアル」のための補助金です。新エネルギーの場合は新築のことが多いのですが、省エネの場合は既存のものをリニューアルすることが多い。本年度の補助金の特徴としては周辺機器から設備に範囲が広がったことがあります。
最近の変更点については図にまとめましたのでそちらをご覧ください。
応募種類の作り方は。
鈴木:プレーヤーとフォーメーションが大事となります。つまり、設備投資に意思決定がある人・社内で実務をやる人材・関連業者などのプレーヤーと、それぞれの役割を明確にしたフォーメーションです。
 
その上で、制度の長所・短所を知る必要があります。かつ補助金には申請締め切りや事業期間などの制約がありますので、計画的に作業を進める必要があります。細かくて把握しづらい場合は私たち相談所をご利用ください。
 
―エネ経会議に求められること。
鈴木:国の補助金はその運営主体として大企業を意識して作っているため、中小・個人事業主には業務処理量が合わない・追いつかない場合もあります。
 
大企業は人材も経験もあるため、我々には補助金の最新情報だけ求めてこられます。中小企業はある程度の人材はいますが、本業に支障がでないように行うために我々にサポートを求めてこられます。それ以外に省エネに意識があっても対応する人材も情報もない企業の場合は申請処理の代行を求めてこられます。このような方々のために我々としてエネ経会議の支援策スキームを作って対応しております。
相手のニーズに合わせて情報提供のみか代行まで行うか、です。代行ではなにをするかというと、補助金を得るために紙ベースの申請書作成や採択後の中間報告、実績報告書などの作成の代行です。このほかに提携書類や見積書、申請メンバーの登記簿など申請主が担当しきれない場合は我々が補助しております。
片野:エネルギーへの取組としては大きく分けて創エネと省エネがあり、エネ経会議のメンバーの中には創エネに取り組まれている方もいます(※前々号・前号インタビュー参照)今回は省エネについての取組について省エネの意味と省エネを実現する補助金利用した設備導入をどう行うかの観点からご説明いたしました。