いまこそ再生可能エネルギーの導入加速を-エネルギー危機の中でも気候変動対策の強化を求める-
ロシアによるウクライナ侵攻は、世界のエネルギー供給を不安定化させ、原油や天然ガス価格の高騰を招きました。その中で懸念されるのは安定供給のためとして化石燃料への依存を続ける、かつてのエネルギー議論への回帰です。しかし、欧州連合が3月上旬に公表したロシアへのエネルギー依存の解消をめざす戦略では、太陽光発電、グリーン水素など再生可能エネルギーの供給加速を中心に位置付けました。特にドイツは、2035年に再生可能エネルギーで国内電力供給のほぼ100%をまかなう法案を発表しました。
欧州の電力供給に占める再生可能エネルギーの割合は40%を超えていますが、日本では未だ20%程度です。化石燃料への依存が大きい日本では、原油や天然ガス価格高騰の影響を強く受けます。日本で今取り組むべきは、エネルギーの総使用量を減らすこと、つまり、省エネ・エネルギー効率化を徹底するとともに、世界情勢に左右されない再生可能エネルギーの導入を加速することです。
原子力発電の再稼働促進を求める意見も表明されていますが、規制委員会は「安全に妥協は許されない」と述べ、特別な措置は取らない意向を明確に示しています。また今回のウクライナの事態は暴力的な攻撃への脆弱性を明らかにし、放射性廃棄物の処分方法が未確立という持続可能性での弱点は変わっていません。
日本でも太陽光発電コストは1kWhあたり10円を切り、多くの企業でPPAを活用した再生可能エネルギー電力の開発・調達が進んでいます。地方自治体では促進区域の設定や新築建築物への太陽光発電設置義務の制度化など、導入拡大が取り組まれています。
政府は、本年6月を目途に「クリーンエネルギー戦略」の策定を進めています。この戦略は、風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギー開発の促進を中心に据え、気候変動イニシアティブが昨年求めたように、2030年に40%~50%の導入を可能とするものでなければなりません。
4月4日公表の IPCC 第3作業部会の第6次評価報告書は、現在の政策では世界の気温上昇が3.2℃に達すると警告し、COP26で合意された 1.5℃目標の達成には、遅くとも2025年までに温室効果ガスの排出をピークアウトさせ、2030年までの43%削減(2019年比)が不可欠としています。
エネルギー危機の中でも、気候変動対策をあいまいにすることは許されません。
私たちは、自らの取組みの中で、また地域でのパートナーシップを通して、対策の強化に取り組むことを誓うとともに、政府にも再生可能エネルギー拡大を一層強力に推し進めることを求めます。