今後は洋上風力発電も行っていきたいと検討しています。更に新たな陸上風力発電に関しても山間部での発電も検討中です。安定して電力を地域に供給するためにはエネルギーミックスという観点が大切です。というのは、風力発電は平均すると発電の能力の20%位しか通年では発電していません。どういうことかというと風が吹かなければ発電量は落ちるし、風が強く吹いた場合はもっと多くの電力を産み出すのでその平均が20%くらいということになります。風が強い時は地域の需要を上回る電力を産むので他所に電力を売ることになりますが、風が吹かなければ電力市場から調達しなければなりません。
 
地域には近くに勾配のある山間部と河川があることから小水力発電の可能性に着目して調査をしています。
また発電そのものではないのですが、地域でお金を回すためには自治体や漁協やケーブルTV会社と組んだ漁港の脱炭素事業、データ情報事業、自治体や地元企業と協力したPPA(太陽光自己使用自家発電事業)、空き家有効利用事業などにも取り組みWPグループが地元経済に貢献する会社である活動も起こしています。
ーこれらの取組で解決を目指している課題と、そのための取組の目指す姿は。
 
矢口 当地の課題とWPグループの対策は
①人口減少…女性の雇用、所得の増加、新規事業の創出
②財政逼迫…年商15~100億円企業の創出、税収の増加
③自然災害…地球温暖化防止、緊急電源の確保、通信網・送電網の整備
④環境悪化…CO2削減、SDGsの推進
 
の4つを想定しております。
 
これらを解決し、エネルギーと資金そして情報の地域還元・地産地消から、エネルギーも利益も人材も都会に流出することなく地域に還元する姿を目指したいと考えています。例えば、現在、国は脱炭素で地域を順番付けており、大手企業含め行政ならびに自治体も地域全体で脱炭素に取り組んでいますので、我々も地域で取り組みます。
 
また、地域での雇用については、地元の女性を中心にした雇用を増やしたいと考えています。といいますのも、江津市としても女性の雇用を課題にしておりましたので、この課題に貢献したいのです。具体的には単に採用するのではなく、例えば主婦の方向けに時間別に雇用する案や、お子様を見ながら働ける環境づくりなどを検討しています。
 
私たちは様々な取組を各事業所が己の地域でそれぞれ取り組み、結果、現在各事業所ともに地域に根付いてきておりますので、事業としても今後はさらなる展開も検討しております。例えば神楽電力については、現在は風力発電1基の電力だけを供給していますが今後は規模を拡大させます。風力発電は発電量が地域の需要をオーバーするのでWPで発電している電力は1基を除いて「みんな電力」を通して県外に電力供給(輸出)しています。
ー洋上風力の地元発で進めておられるとのことですが、何故洋上風力へも展開を拡げようと思ったのでしょうか。

矢口 洋上風力で生んだ電力は広く中国地方全体に供給する計画で、最短で2030年開始の予定で進めております。洋上は風車が巨大で、一基14メガワットの出力もあります。これは現在私たちが使っている風車の7基分に相当します。将来的にはこれを35基計画しております。規模にして数千億円のプロジェクトですので、このための港の整備や、メンテナンスのための場所も必要になります。そのため漁業関係者と連携して一緒に取り組む形を目指しております。それが結果的に地域の雇用にも繋がり地域活性にもつながります。
 
洋上風力自体は「海に風車を設置する」ことから漁業にはマイナスに感じられるかもしれませんが、プラスの面もあります。例えば風車の基礎に海流、海温計測器を付けたり、魚群探査機を設置して漁業のために利用することができます。また巨額のプロジェクトのため、漁業基金を設立し、漁業振興に運用する等、それらプラスの面を生かし、将来は電力漁船の充電設備に利用したり、海洋レジャー施設の設置など、若い人達に漁業や海洋産業の明るい未来も企画いただき、漁業関係者と一緒になって、計画を進めて行きたいと考えております。かつ、台風による海岸浸食や風力発電設備に発生する錆など、環境や機材へのメンテナンスも必要になりますので、地元の企業と組んで地元にお願いする形で解決することで地域貢献に繋げています。
 
ー洋上風力始め、今後目指している経営方針をお教えください。またそれに向けた取り組みをお教えください。

矢口 「地域に電気 人に元気」で地域の人が人を大切すること。これを目指します。

そのための地域内循環として、現在、①空き家・公民館②漁港③自然エネルギーの課題解決を目指しています。地域で産み出す電力を核として、これら3者と①地域メディア(石見ケーブルテレビ)②地元メンテナンス③環境未来を結び付けながら地域内循環を実現したいと思います。
 
エネルギーは今、資源も人材も地域から都会に流出し、売上も大手に持っていかれるのが実態です。これを自分たち地域で回す姿を目指します。具体的なこととして、例えば地域の方々が使用される電力を神楽電力に切り替えることで公共施設・ご家庭の温室効果ガス削減効果CO2 25%削減、⾏政施設・ご家庭の電気代5~9%の削減に繋がり、その浮いた分のお金を他に回せるということも地域経済循環に繋がります。


将来の計画としては現在の陸上風力事業を発展させるべく、中山間地のエネルギー開発としてスキー場での風力開発も検討しています。世界初の再エネによるリフト、ゴンドラ、レストハウスの運営、更に、雪不足によるスキー場経営のリスク対策として、自然エネルギーを利用したキャンプ、グランピング、山岳カフェ運営による365日経営も提案しております。
 
自家消費型太陽光発電事業の新事業としてPPA事業者と地域の物流倉庫やスーパーマーケットさんなどとの間で発電した電力を回しています。これにより地域で電力購入を促し、地域で経済が回ります。先にもお話しました自治体の脱炭素事業の手伝いや、漁港のゼロカーボン事業を主にPPAを通して取り組みます。
 
産み出す電力についても規模の拡大を視野に入れております。現在、規模拡大を計画している中でも地域の皆様からは反対のお声が届いていません。これは私たちが当初から地域に根差し、地域の方と一緒に事業を発展させてこれた宝だと思います。
 
また、地元ケーブルテレビ(石見ケーブルテレビ)と組んで販売を展開することで、地域連携を行っております。地元の情報産業と連携し、高齢者見守りサービスも視野に入れて連携していく予定です。電力も地元で送電する方向で計画しております。つまり、情報もエネルギーも地元で回す、ということです。情報という視点では、現在、東電や博報堂が電力データを使って、商売を始めています。ですが、地域のデータは地域発信でいけます。大手でもなく地域で我々が取り組もうと考えております。
 

出前講習の様子

ー地域貢献について。

矢口 まず、地域の海岸清掃に毎年参加しています。日頃大きな風車の近くで生活する地域の皆さんに恩返しをしたいという気持ちで活動していますこれは20年近く取り組んでいます。この地域でのコツコツとした取組の結果、地域に信用され、お陰様で地域から反対意見が無くなりました。風車の音についても、技術的な低減の対策と努力を続けて来ました。現在も継続して行っております。その結果として、「お前たちがやっているなら、協力しよう」と理解していただけるようになりました。
 
次に、教育機関へ出前講習も取り組んでおります。幼稚園では子供さんたちにわかるように絵本でエネルギーの説明を行い、かつ現場見学の受け入れも実施しています。要望があれば小学校から地元の県立大学にも伺っています。
このほか、江津駅前活性にも取り組んでいます。駅前案内所への発電やイベントの電力サポートなどのほか、地域集会所への寄付や改修援助も実施しております。
 
また、今後は自治体と協力して、空き家や公民館に太陽光パネルをはり、Wi-Fiの整備を計画しています。ここで地域の皆様が勉強やゲームなど憩いの場として使えるようにすることで地域の方のためになる空間作りを行いたいと考えております。かつ、蓄電池をつけることで災害時には災害拠点として活用し、EVも整備することで緊急車両に対応できるように計画いたします。このほか、都会など外からの移住希望者へのDIY賃貸も検討しております。
 
最後に、前回にも御話しておりますが、「みんな電力」で販売している電力についてはのどぐろやメロンなど地域物産をプレゼントしています。

江津WPの夕日

ー他の地域でも同じような事業展開ができるでしょうか

矢口 それについては「エネルギーミックス」という言葉を先にあげましたが、これは地域ごとに地域に合った電力発電をやるべきと考えています。例えば小田原市は太陽光エネルギーを軸にソーラーシェアリングを展開されておりますが、島根は山が多く平地が少ないため、太陽光より小水力が向いています。神楽電力は安定した電力が必要なので山間地については小水力が向いています。
 
ですので、バイオマスが向いている地域はバイオマスを、太陽光が向いていれば太陽光を、そういう意味でエネルギーミックスです。海外からヤシガラを持ってくるというのではなく、地域の地理に合う再エネ発電を進めるべきだと思います。ですので、私たちは今、地熱も考えています。
 
ー小水力の可能性についてお教えください。

矢口 小水力は風力や太陽光と異なり、24時間発電することがメリットです。たとえ200キロであっても稼働率は強みです。
設備利用率(発電量÷(最大出力×24時間×365日))だけで言うと、風力の場合は山間部より洋上の方が高いです。風は陸上だと障害物などによる摩擦がありますが、洋上は基本摩擦はゼロです。ですが、風力は日々安定しません。ゼロの日もあります。だからこそ24時間365日(点検、不具合停止日数は除き)電力を確保する手段として小水力発電も行います。ということで現在は、小水力について農業用水や川での展開を目指し勉強中です。水利権や流木などゴミの課題もありますが、これも地域で取り組んできた我々の、日々の地域との信頼が強みになっています。
ー全国の仲間、そしてこれから地域で事業に取り組もうとしている方々に向けたメッセージをいただきたく、お願いいたします。

矢口 私は運がよく今の自分があると思っていましたが、それでもよくよく振り返ってみますと大変なこともありました。ですが、東京に居てはできないことが出来ました。田舎だからできたと思っています。田舎には自然があり、だからこそ出来たのだと。
 
また、田舎に居るからこそ行政との距離も近く、敷居も高くないと思います。東京ですと行政組織自体も大きく何かと時間がかかります。ですが、田舎では地域も行政も、商工会議所青年部も、地域のために皆が動いています。だから地域の活動を地域が応援もしてくれます。地域に根差して取り組むからこそ、仲間ができ、信用が生まれ、先輩方が応援してくれるのです。
地域で暮らし、地域貢献し、そうやって地域から信用をいただけたら、私のように外から入った者でも事業はできます。ですから地域での仲間は大切です。
 
そしてもうひとつ。モチベーションは大切です。一生懸命に取り組めば、人は情報をくれたり応援してくれます。ですから、まずご自身の熱意は大事です。一生懸命に地域で色々に関わることで、地域の人は、よそから来た人間であっても話も聞いてくれるし、信用もしてくれます。そして最終的には大手企業との信用にまでつながります。
 
最後に。今は地域・田舎はセールスポイントです。いい意味で大手企業をも利用できます。田舎でも事業はできます。そして人は誰しもが、生活する上でエネルギーを必ず使います。電気を使います。エネルギー事業は国の政策にも安全保障にも関わります。エネルギーを考えることは広い世界を、広い視野で見ることでもあるのです。
 
私たちが生活する上で電気は必要です。そしてその電気を生むには田舎が有利です。田舎は強みです。若い方々にも一生懸命になれる事業としてぜひエネルギー事業に取り組んでいただけたらと思います。
 
信念があれば、人が集まり、知恵が集まり、お金(資金、与信)が集まり、事業となります。