二番手は、人口と経済課題だ。
コロナ禍はとてつもなく大きな経済悪化をもたらした。しかし以前からの隆盛を極めてきたグローバル経済、市場原理での強欲資本主義の行き過ぎで経済は綻びが見えていた。
世界人口は1950年の25億から、この70年間で3.2倍の79億へ急激に膨れ、人口ボーナスで世界経済も何とか廻ってきた。
この間に、医学、鉄鋼、化学、家電産業、自動車や航空機、電子機器などの革新と人口増とで、大量生産大量廃棄社会と人口の大都市集中へとなった。これが鉱物とエネルギー資源の大量消費へ繋がった。世界は「右肩上がりの経済成長」の夢を見ている内につまずき、挙げ句の果て経済混乱のるつぼへ落ち、環境悪化、格差の拡大、社会混乱が生じた。
同時に30年間に渡りくすぶり続けていた地球温暖化が経済成長に合わせて、特にこの10年は様々な大きな障害と災害をもたらし増加した。その上にコロナ禍が生命と経済問題に覆いかぶさり、とどめを刺したのが現在と言えないだろうか。
三番目は、急激な人口増とエネルギー需要増大とそれによる地球温暖化問題である。
繰り返すが人口増大と経済膨張が、エネ需要を大幅に拡大させた。日本は150年前の明治5年、1872年の人口は3480万人とされ、現在は1億2550万人の3.6倍となった。
世界はどうか? 政府資料での産業革命時の1800年推計値は9.7億人、2020年は79億人、この220年間で8倍の人口爆発となった。
長く続いた農耕・牧畜主体社会は、1770年頃から1830年代の綿織物生産における技術革新、製鉄業の成長、なにより蒸気機関開発による動力源の刷新で蒸気船や鉄道の発明、そして産業革命が全世界を変えた。これを皮切りにこの220年間は、電気・石油による重化学工業、第二次大戦後の家電、自動車、原子力エネルギー利用、そして第四次産業革命とも言える情報通信関連時代へと突入。エネルギー消費量が産業革命時代は極少量だったが、2019年には144億㌧の百数十倍の大消費量へ拡大した。それは膨れ上がった人間の欲望による消費増大と、技術の革命的進歩による電気、鉄鋼、セメント、化学製品などの大量生産、人、物の高速大量移動、加え大量の情報伝達によるものと考える。
化石エネの急激な消費が大量のCO2を放出し温室効果を生み、その加速は極端気象による大惨事を全世界へもたらした。世界気象機関は、2020年は産業革命以前の平均気温から1.2℃上昇と発表。COP26のパリ協定で「人類生存限界値・回復可能数値」として温度上昇抑制目標値は2℃以内保持が今では1.5℃となり、余地は0.3℃しかない。もう2030年代半ばには1.5℃を越えるのではないか?生命に関わるリスクどころか人類を含めた生態系すべてが暗い後戻りの出来ぬ絶滅への深淵へと導かれている。
脱炭素化社会の形成は待ったなしとなり、今頃になって政界も産業界も慌てふためいているとしか思えない。何もかも人間活動が、自らが、生み出した回帰不能点に達しつつあると思われ、残念ながら最早手遅れではないのか?
新春早々、脱炭素化関連について厳しく悲観的なことを述べてきた。ここでエネ経会議の方に、企業でも家庭でもエネルギーに関しての基本を考えて欲しい。
先ず、自分が欲する本当に必要なエネサービスとは何か?それを明確にし、エネルギーの需要を再検討する。その上でどうエネ需要を削減、つまりを節・省エネを図り、次いで再エネ導入を図ることが肝要。そこでの注意点は、電気にばかり眼が行くが、熱にも力を入れる。その需要比率は3対7で、熱の攻略が重要。何故なら電気はエネ投入の有効活用率4割、残りは空へと消える。熱は投入エネの8~9割は有効活用となる。
因みに国は2030年度に「温室効果ガス削減は2013年度比で45%、省エネ量は2019年度1650に対し6200万㎘削減」、再エネ導入は電気3400億kWh内外、電源構成では 36~38%)だ。1990年比で、EUは温室効果ガス60%削減、残念にも日本は39%でしか無い。
次いで、企業は地域社会へ眼を広げることではないか。
経済優先から、地域と地球の便益・公益を優先で考え、「持続可能な世界社会の形成、グローバル・コモンズ(世界共通の資源管理、運営)」の構築を模索しなければならない。その手始めに始まっている参考地域例が、米国のパブリック・ベネフット・コーポレーション、独国などでのシュタットベルケである。
これは、森林、公園、道路、電力と熱供給、そして、公共に変わり水道や下水道、図書館、公共水泳プールなどを含めた地域公共サービスを担い始めている。
従来の利潤追求の資本家ばかりが儲けるのではなく、環境、地域社会へしっかりと配慮し、公共サービスの一部に責任を持ち投資を行い地域とともに歩み、地域へ貢献する。
それにより利益率は下がり利益最大化は望めないが、持続的な経営が可能となり、環境配慮や経営の脱炭素化を諮ることが将来負担を軽くし、リスクが小さくなり長期的には評価されることとなる。
求められるのは具体的な地域での民主的話合いと実践活動が必要と考える。国や自治体や人任せではいけない。個人も、企業も身近な出来ることから取り組むことが必要。本社団では、節・省エネと再エネ創出、エネ管理を含めた地域エネ自立に注力を期待する。
ここで筆者の関係した小さな話に変えてみる。
大震災での原発問題と温暖化問題の急拡大以降、化石エネが問題の総ての根本を成すと考えた。乾燥木材1kgは電気1kW、熱1700Kcalを生むことからエネ利用率80%の小型ガス化設備に注力した。木の蒸し焼きでCOとHのガスで電気と熱を得る。熱は700℃のガスとエンジンを冷やして回収熱利用をする。5施設、計約4.5MW(4500kW)が稼働し、内2件は市民病院と30戸ほどの小集落で給湯、冷暖房を行っている。
木材は伐採から建築、家具、燃料、エネ生産などまで顔の見えるサプライチェーンを形成し、資本も信金、地銀で賄え、外部資本に頼らず金が3,4回と地域内で廻り、地域乗数効果が大きい。今では木材は、超軽量・高強度のボディー、バンパー、ガラス、タイヤ、プラなどの原料となり、それらを使った自動車が京大で走っている。
身近な話では、40年前に家を最低50年は持つ軽量鉄骨構造発泡コンクリートに建替えたことで断熱効果は上がっていたが、7年前に屋上断熱防水シートや高耐久性塗料と複層ガラス窓、LED照明、3.5kW太陽光発電を設置。オール電化で、電力売買差引き年間光熱費は数万円である。昨年は樹脂枠複層ガラスの内窓と最新省エネ床暖房設備とし、今年の厳寒の早朝で部屋は12℃内外、廊下も8℃内外である。ただ一部屋は雨戸、二重ガラス窓に樹脂枠複層内窓と残した障子もあり、4層となり開閉に家人の不評を買っている。レースカーテンも遮熱断熱材を使用。残念ながら車はEVではなくハイブリッドである。いずれ蓄電池が安価になったら備えようと考えている。
長々と書いたが、企業や個人も少しずつでも環境と温暖化に配慮され,エネルギーに関心を持ち、これからの経営、子や孫、未来の人々へ責任を持ち、禍根を残さず、負担を減らすことは責務であり、努力を続けられることを切に願う初春である。