その時のキーワードは、「場所文化」(画一的な効率を追求する西欧近代文明に対峙する形で、行政区には拘らない地域・ローカルが昔から持っている多様かつ自然との共生に根付く、風土・歴史・ものづくり・方言等をいう)という言葉であり、「場所文化の創造によって、人々の新たな交流(地方と都市の新たな関係)を促し、地域への新たな資金流入と域内での資金循環の仕組みを構築し、場所(地域)の自立(経済の活性化と関与人口の増加、持続可能性の確保)を目指す」と設立目的に皆で刻み込みました。立上げメンバーは、我々3名の他、当時の全国商工会議所青年部会長であった鈴木悌介氏や全国各地の中小企業経営者(鈴木氏に連なる当時の全国YEG主要メンバー)を始め、銀行員、公務員、大学教授等多様な職種に亘る4~50名となり、早速、場所文化ツアーと称して、全国各地の仲間たちを巡りながら、そこの場所文化を探り出し、語り合いながら、活動を開始しました。(以上の設立経緯からも少なからずのメンバーは、エネ経会議にも関わっています)

<場所文化フォーラムのその後の主たる活動~ローカルサミットの継続開催>
2008年7月、リーマンショック直前のG8首脳会議が洞爺湖で開催された翌週、全国から志民が「十勝」に集まり、第1回ローカルサミットを開催しました。3日間の議論・交流の後、「人類・いのち・地球が直面する危機は、グローバル資本主義に起因するところがあり、国民国家間の調整・協議のみでは解決できない」ことを皆で確認し、これまでの延長線上ではなく、忘れられかけている地域の仕組み等に解決の糸口をみつけ、「場所文化」を蘇らせ、いのちの原点に立ち戻る「環境・生命文明」の構築をめざそうと、ローカルサミット宣言を発しました。(ローカルサミットについては、http://lsnext.jp/ ご参照)
その直後に100年に一度の金融危機(リーマンショック)が起き、そして2011年には1000年に一度の自然の災禍であり、かつ人間の災禍でもあった東日本大震災・原発事故の発生があり、更に2015年には世界的な地球環境問題や格差拡大等の問題克服の必要性を訴える国際公約(SDGsとパリ協定)が発せられる中、グローバル資本主義・近代の物質偏重文明・中央集権型巨大システム依存から脱却し、「確かな未来」を創るには、ローカルからの変革が必須であるとの確信の下、毎年全国から200名強の志民が集い、ローカルサミットを全国各地(十勝、愛媛、小田原、南砺、阿久根、上州・南相馬、高野山、庄内、倉敷、東近江)で継続開催してきました。

<地方創生の4つの方程式>
以上のようなローカルサミット開催等を通じて、私は、地方創生に必要な戦略的アプローチは、次の4つの連立方程式に集約できると整理しました。
第一は、この間、食いつぶしてきたといえる地域の宝と呼べる様々な地域資源ストックの再生を、自然資本の再生等を中心に据えて着実に回復していくこと、いわゆる「森里川海プロジェクト」の遂行です。第二は、同時に、地域へのお金の流失と都会への依存を改めて、地域内でお金が廻るように、食・農やエネルギー等の経済的・人的フローを地域内循環に戻していくこと、それはエネルギーの自立を中核に据えた「エコビレッジ構想」の具体化といえます。そして3番目は、1,2の活動を通じながら、地域で子ども達を自然と共に育て、「地域の誇り」を刷り込み、いずれは必ず地域に戻ってきて、地域持続の役割を担ってもらえるような地域教育による「地域人材の育成」を図ることです。そして、最後は、以上の諸活動を地域の住民が主体的に、行政や地元企業、地元金融機関を巻き込んで温かなローカルマネーフローを創り、住民自治による「新たなまつりごと」の仕組みを構築しつつ、実践していくことです。こうした4つの活動の相互に連携していく(連立方程式の意味)ことで、真の地方創生が実現すると確信します。

<エネ経会議との連携>
上述したように、場所文化フォーラムの活動とエネ経会議の活動の接点は、地域及び人的関係でも深くあります。ローカルサミット開催地同士の連携・協議は、様々な分野(再生可能エネルギー、教育・健康医療、ローカルマネー等)で既に幅広く実践され、双方の地域活性化の原動力ともなっていますし、この間、環境省が提唱する「森里川海プロジェクト」や「地域循環共生圏」構想の具体化の場所ともなっています。例えば、南砺市で構想している地域電力会社構想は、湘南電力スキーム等の学びからでありますし、今年の10月9~10日に開催予定の第3回ローカルサミットNEXT in庄内の舞台になるヤマガタデザインでは、エネルギーの地産地消モデルの具体化を進めています。今後とも,地域の自立循環に欠かせないエネルギー問題の解決においては、エネ経会議の幅広い知見と実践例が極めて有益ですし、これまで以上に両団体の連携強化を進めていきたいと考えています。