一社)エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議の代表の鈴木悌介と申します。
本業は、神奈川県小田原のかまぼこ屋です。今年で江戸時代の創業から数えて157年目になりました。
併せて、地元の経済団体である小田原箱根商工会議所の会頭を務めております。
エネ経会議とは、10年前の3.11での福島原発の事故を踏まえ、地域の中小企業の経営者が集い、エネルギーを自分ごととして捉え、持続可能なエネルギーによる持続可能な地域づくりを標榜して、2012年に生まれました。
現在、全国約280社のメンバーと共に、
1.賢いエネルギーの使い方を学んで実践する つまり省エネと
2.再生可能エネルギーの地産地消を進める活動をしています。
具体的には、メンバー向けの省エネ診断やエネルギーに関するコンサルテーション、そして様々な勉強会を実施しています。
さて、私たち地域の中小企業は地域の暮らしの血液の流れである地域経済を下支えするという役目を担っていると自負しています。私たちが元気でないと地域も成り立ちませんし、地域が元気でないと私たちも商いを続けることができないという表裏一体の関係にあります。
そのために自分たちのビジネスの環境を整えるという意味で、地域でお金を回すこと、そして、東京一点集中から脱却して地域分散型社会を広げていくことは極めて重要だと認識しています。
地域の経済循環においてエネルギー支出はとても大きな比率を占めています。地域で再生可能エネルギーの地産地消を進める所以です。
そして、言うまでもなく、エネルギーは気候変動に大きな影響を与えます。
気候変動は決して大企業やグローバル企業だけの問題ではなく、地球の裏側の話でもありません。
一昨年の秋、台風19号が箱根に1日で1000ミリを超える豪雨を降らせました。道路は分断され、登山電車の線路は壊滅的に破壊され、私ども地域の主要産業である観光は甚大な被害を受けました。異常気象は、いや、すでに異常ではなく常態化していると言えますが、その原因である気候変動は、私たちの日々に商いに多大な影響を及ぼす自分ごとであることを思い知りました。
また、世界の脱炭素の動きから遅れをとると、日本は世界のバリューチェーンから外され、日本の大企業やグローバル企業がビジネスを失うと、一蓮托生、そのサプライチェーンの末端にいる私たち地域の中小企業も仕事を失います。多くの中小企業が脱炭素は死活問題に直結する、まさに自分ごとだと気がつき始めています。
気候変動や脱炭素とは、環境問題であると同時に、私たちの商いに直接的な影響を及ぼす
経済問題でもあります。それを逆手に取れば、脱炭素こそがビジネスチャンスになる、まさにコロナからの快復の切り札とも言えます。
昨年10月には、私の地元小田原箱根で、地域のステークホルダーが揃って、つまり、小田原市長、箱根町長の二人の首長、小田原市議会と箱根町議会の二つの議会、小田原市と箱根町の二つの自治会連合、小田原箱根商工会議所の7つの団体が集い、「小田原箱根気候変動ワンチーム宣言」を発信しました。地域からの脱炭素へ向けての行動が始まる兆しが見えてきています。これを大きなうねりにしてまいります。
今コロナで起こっていることの中には、コロナがなくとも遅かれ早かれ起こったことが多いように思います。今私たちが垣間見ているのは「来るべき未来」なのだと思います。「来るべき未来」のキーワードは持続可能性、脱炭素、分散型社会などでありましょう。
「来るべき未来」は私たち地域の中小企業が地域から創っていこうと思っています。
この国の働く人の7割を雇用し、半分以上の付加価値を生み出す中小企業の責務は大きいと思っております。
最後に国にお願いいたします。バックキャスティングの視点で、大きなビジョンを掲げ、挑戦的な目標を打ち上げていただきたい。
明確な方向性を示していただけると、民間の取り組みにはドライブがかかります。中途半端な目標からは中途半端な取り組みしか生まれてこないと思うからです。
中小企業の経営に携わる者として、小さいことは必ずしもデメリットではなく、小さいからこそできることがあると信じて、小さな新しい現実を一つひとつ創ってまいります。
私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。