株価や為替の乱高下が、新聞やTVなどのメディアで毎日、さも大事件かのように取り上げられています。政府や日銀は、株価が下がったり円安になると困るようで、必死にその二つの数字を操作しようとしています。確かに、世界の投資家(個人もそうですが、いわゆる機関投資家といわれるグローバルマネーが大きい)と輸出依存の企業にとってはありがたいことかもしれません。しかし、上場会社の株価が実態の経済を反映しているかといえば、決してそんなことはなく、私のような地域の中小企業の経営者は直接の関係は感じられないというのが実感です。また、円安で喜ぶ企業もいる反面、困る企業も多いはずです。経済には必ず両面があると思うのです。
アベノミクスと言われる政策から打ち出される様々な経済刺激策はあくまでカンフル剤だと受け止めるべきだと思うのです。そのカンフル剤を使いながら、足腰を強くし、内臓を掃除し、しなやかな体を作ることをしなくてはならないと思います。それは地域の経済にも自社の経営にも言えることだと思います。
このたび、私が会頭を務める小田原箱根商工会議所では「地域の経済循環の可視化の試み」というレポートを出しました。地域経済の活性化とかまちづくりなどの議論の場でよく耳にするのが、「地域でお金を廻そう」とか「地域での経済循環」といった言葉です。しかし、実際にどのくらいのお金が廻っているのかを示す指標は世の中に存在しないということが分かりました。ならば、作ってみたいと思いました。地域経済を下支えする中小企業による地域総合経済団体を自任する商工会議所として、「地域でお金を廻そう」と言いながらその量を計る指標がなければ、その言葉は単なるスローガンに終始してしまうと思ったわけです。ある政策や事業を実施した成果、どのくらいのお金が地域に残り、また次のサイクルへ使われるのかが分からなければ、PDCAを廻していくことはできません。単なる統計的な経済指標ではなく、例えば、まちづくりの効果測定にも使えるような指標ができないものかと思案を続けておりました。しかしながら、経済の現場にいるとは言え、経済学の専門家ではない私どもにとって、それは手に負えない難題でありました。このたび、日本銀行横浜支店とリコー経済社会研究所(わがエネ経会議のアドバイザーでもある副所長の神津多可思氏)のご指導とご協力を得、当所の7つの部会と役員にあたる議員の有志からなる勉強会での議論を経てまとめたレポートを発表いたしました。もとより、地域での経済活動の全てを詳細に正確に捉えて数値化することが目的ではなく、あくまで、地域経済の現場で実施した施策によって地域で回るお金が増えたのか減ったのかを示す指標を炙り出そうという試みです。その結果、13%という数字と併せ、地域で回るお金を増やすには次の6つのことが重要だと分かってきました。(当たり前と言えば当たり前のこともありますが)
1.雇用が重要(地元の人を雇って給料を支払う)
2.地元企業の育成・成長が重要  
3.地場産比率の引上げも有効
4.定住人口の増加が好循環につながる
5.公的セクターの寄与は大きい(集めて税金はできるだけ地元で使ってもらう)
6.観光も重要(域外からの来訪者にお金を落としてもらう) 
これを道具として活用し、地元で廻るお金を増やす施策を考えていきたいと思います。
*詳しくはレポートの全編が小田原箱根商工会議所のHPに掲載されていますので、ご覧ください。
 
地域での再生可能エネルギーを中心としたエネルギーの地産地消と賢いエネルギーの使い方を学んで実践する=省エネの二つを進めることは、地域で廻るお金を増やすためにはとても有効だということが改めて実証できたと思います。私たち中小企業が地域でエネルギーに取り組むことこそ、まさに地方創生の特効薬だと思います。エネ経会議の活動はますます重要です。