やっぱり地方創生はエネルギーから

　エネ経会議の視察会で先月7月20・21日一泊で北海道・下川町へ行ってきました。

下川町については、エネ経会議特派員の高橋真樹さんのレポートに詳しく掲載されているので是非ご一読ください。http://ameblo.jp/enekeireport/theme-10101730262.html

　旭川空港からレンタカーで北東へ２時間ちょっと。90 %近くが森林という東京23区ほどの広大な面積を持つ、夏は+30℃、冬は－30℃という厳しい気候の町です。1960年頃には15,000人以上の人が住む林業、鉱業が盛んなまちでしたが、それらの産業が衰退するつけ、人口が激減し、現在3,400人ほどに。

　ただ、人口はこの数年でまだ増えるところまではいっていませんが、下げ止まりになったそうです。そして、内閣府の環境未来都市に選ばれるなど、注目を浴びるまちになり、視察はひっきりなしだそうです。限界集落になるところまで追いつめられた町は、もう一度、森に注目しました。いや、森しかなかったというのが実情かもしれません。森を計画的に育て管理し、捨てるところなく徹底的に使うことにより、地域の産業が復活し、移住する人も増え、まちに活気が戻りつつあるとのことでした。製材、集成材、木炭、木酢液、燻煙してガーデニング用枕木、アロマオイル、そして、チップと一本の木を捨てるところなく活用し、お金にすることにまちを挙げて取り組んでいます。

　中でも興味深かったのは、熱というエネルギーに焦点を当てた取り組みです。町の各所に計11基のチップボイラーを置いて、地元産のチップを燃やし、地域の熱供給をしています。

　町をひとつの会社に見立てて収支を計算すると、域外からエネルギー（電気、ガス、燃油など）を買うのに年間約13億円を払っているそうです。つまり、毎年毎年それだけのお金がまちから外へ流れ出している。その赤字を改善するために、森を徹底的に育て利用し、エネルギーの自給率を上げ、外に流出しているお金を域内に残す。そのお金は、例えば、雇用を増やすとか、学校を充実させるとか、介護や医療の体制を整備するとかの、まちの課題を解決するために原資になっているのです。そして、その効果として、実際に雇用が増え、住民にとって住みやすい環境整備が進んでいます。その証拠は、IターンやUターンの若者が増えていること、つまり、人口の社会増が見られることです。

　下川町はある意味とても分かりやすいケースかも知れません。人口減も行きつくところまで行ってしまい、産業も限られていて集中しやすい…など。ただ、同じような状況の陥ってしまっている、つまり、一所懸命稼いだお金で外からエネルギーを買わなくてはならないため、貧しくなってしまった地域は全国各地にあるのだろうと思います。もともとエネルギーを自給していたのに、いつからか、手元足元のある熱も含めたエネルギーを活用するのを止め、エネルギーは外から買うものだという固定観念に囚われて思考停止になっているのではないかと。この日本という国全体も実はそうなのかも知れません。下川町の13億円は日本全国の総和では28兆円に上ります。その一割でも二割でも自分で賄うことは不可能ではないと思うのです。そのための資源は自分の手元足元にあり、そのためのテクノロジーはあるのですから。（なおかつ、温暖化対策にもなります。）

　地方創生というなら再生可能エネルギーの地産地消でと申し上げているゆえんです。それは地域経済の活性化という極めて現実的な課題であるが故に、経営者の集まりであるわがエネ会議が取り組む意味があると思うのです。

◆　鈴木代表理事　行動予定